笛闘紳士(てきとうしんし)

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       [まゆ 私の人生No.❓]

これは、強い雨が降っていた、小学1年生の時の放課後、七夕の前日である7月6日の事。忘れもしない、今は亡き飼い猫(家族)との出会い。

放課後…小学校から家までの帰り道。私は友達の火野 翼(ひの つばさ)ちゃんと、強い雨が降る中、傘をさし、喋りながら通学路を歩いていた。その時、草むらから何か鳴き声が聞こえた。

(ニャ-)

その小さく弱々しい声に私は足を止めた。
「どうしたの?」翼ちゃんが不思議そうな顔で聞いてきた
「仔猫の鳴き声がした」
「私には雨の音で何も聞こえなかったけれど…」
「絶対に聞き間違いじゃない」
「まゆちゃんの事、疑ってないよ。それにもし、この雨の中で捨てられでもしていたら弱っていると思うし、探して何とかしてあげよ?」
「うん」
私は鳴き声のした周囲を見渡した。その近くに有ったのは、通学路で毎日の様に見てきた、手入れのされてない、背の高い草が生い茂る場所だった。

「ここかな?」私は雨に濡れた草で服やスカートを濡らしながらも草を少し掻き分けて進んだ。翼ちゃんは、私の後ろをついてきた。そこで私達が目にしたのは、段ボールに捨てられた1匹の仔猫だった。その光景に私達は言葉を失った

雨で弱っている為だろうか?呼吸をしているものの、動かずじっとしていた

「私、急いで家に帰ってママに相談してくる。雨も強いし」
こうして私は翼ちゃんと別れて家へと急いだ


急いで家に帰った私は、事の次第をママに話して、人生で一番大きな我儘(わがまま)を言った

「私、その仔猫飼いたい。私には家族が…パパとママがいるけど、あの仔は今も一人だから、助けたい。あの仔と家族になりたい」

「その仔猫を飼ったとしても、猫はまゆより長く生きられないのよ?」

「分かってる」

「その仔猫が亡くなった時、飼わなければよかった なんて後悔しないって約束できる?」

「できる」

「その仔猫、まゆ一人で飼うの?」

「うん」

「餌のお金だって必要になるだよ。そのお金はどうするの?」

「私がお小遣いや お年玉で出す」

ここまでは想定していたママからの質問だった。けれど、次のママからの質問に、私は言葉を失った

「病気になったり怪我したら、その子の病院代はどうするの?まゆのお小遣いじゃ全然足りなくなるのよ?」

動物の怪我や病気の事なんて考えて無かった私は、お金が無くて飼えないと思い、悔しさから涙が溢れて止まらなかった

「お金ないから飼うの諦める」

私は泣きながらママに言った
けれど、その言葉を聞いたママは首を何故か横に振った

「ママも一緒に飼わせて?家族で飼いましょ。大人でも動物を一人で飼うは大変。でも、家族ならそれが出来る。お金の事は心配しなくて大丈夫だから、まゆはその仔猫の事、家族の中で一番可愛がってあげなさい」

その言葉に私の涙は止まった

「パパ、駄目って言わない?」

「駄目って言ったらパパと離婚して、ママと二人で一緒に飼いましょ」
「そんなん…」
大好きなパパとママが私の我儘のせいで離婚したらどうしよう…そんな不安から再び涙が溢れた

「冗談だから。ごめんね。パパはママが駄目って言わせない」ママは私を抱きしめながら誤った
「そんな事、冗談でも言わないでよ💢」
ママの冗談に私は泣きながら怒った

「傘とタオル持って車に乗ってて。その仔猫、ママも見たいし、一緒に迎えに行きましょう。雨も更に強まってくるみたいだし」

私はママに言われ支度をすると、ママと一緒に通学路へ車で捨て猫を迎えに行った

その仔猫はまだ捨てられていた。そこで私はママに傘をさしてもらいながら、タオルで仔猫を優しく包むと、ママと車で家まで帰った。家に帰る頃には仔猫は車内の暖かさと安心感からか静かに眠っていた。

※ この物語はフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません

放課後 作:笛闘紳士(てきとうしんし)

この物語[まゆ 私の人生]は、他のサイトに投稿しようと考えていましたが、上手く作れずボツにした、浅倉(あさくら)まゆ と言う主人公の女の子の人生の話の一部になります。これからも機会があれば[まゆ 私の人生]シリーズを書いていきたいと思います。

10/12/2024, 3:44:40 PM