まだ少し寒い晴れの日、
二人で海沿いを歩く。
少し先を歩くあなたの後ろ姿。
振り返って、今日、風が強いねと笑う。
太陽がまだ低くて、
朝の光がちらちらと波間に煌めく。
些細な日常が急に愛おしくなって
口元が緩んだ。
なんだか照れくさくなって
両手で帽子のつばを引き下ろして顔を隠した。
あなたが、どうしたの、という
なんでもないよといったけど、
不思議そうに見つめるあなたに
ああどうしよう、と思った。
風でワンピースのスカートが
バタバタとはためく。
波の音と、海のにおい。
すこし寝癖のついたあなた。
こんな日が続けばいいと
思ったいつかの日。
「帽子かぶって」
いやいやという
ちいさいあなたに
ちいさな麦わら帽子をかぶせた
いやなのね
すぐにとってしまって
あわれな帽子は床にたたきつけられた
制服着なきゃ、幼稚園に行かれない
20分後に出ないと間に合わないのに
あれもこれもまだ済んでないのに
ああ、ブレザーも脱いでしまった
おねがい、おねがいだから
帽子をかぶって!
1/28/2025, 1:12:58 PM