いつか報われる。いつか幸せになれる。
いつか逆転できる。いつか見返してやれる。
いつか王子様か神様が現れて、こう言うのだ。
「今までよく頑張ったね。あなたは救われる」
いつか、いつか、いつか――。
「君達って本当に自分に都合のいい方に物事を受け取るよね」
男にも女にも見えるその人は、絵画のように美しい笑顔でそう言った。
「いつか報われる、だって?」
だってそうでしょう? 今までの苦労も、理不尽な暴力も今日この日、救われるためにあったのだ。
「幸せになれる、だって?」
だってそうでしょう。あなた、神様なんでしょう?
そう言うと、男はさも楽しそうに肩を揺らして笑う。楽しげに細められた目には、僅かにからかいの色が滲んでいた。
「君、自分が救われるに値すると本気で思ってる?」
「――え?」
「憎んで妬んで嫉妬して。相手より上に行かなきゃ気が済まない君達を、私がこのままにしておくわけないだろう」
その手には大きな鎌が握られている。
「救いは無いよ」
冷たい声と共に鎌が大きく振り上げられる。
――そりゃそうか。
生まれてこのかた、ラクして逃げることしか考えてなかったもんなぁ。
神様はお見通し、ってわけだ。
END
「神様が舞い降りてきて、こう言った
7/27/2024, 12:30:07 PM