ある日、君は記憶障害に陥った。
記憶を司る前頭葉に異常が見つかり、以降、君は記憶を翌日まで持ち越すのが難しくなったのだ。
どんなに楽しいことがあっても、悲しいことがあっても。次の日になれば記憶から消えている。
きっと明日も、義親も、友人も、恋人も、今日あった出来事もキレイサッパリ忘れてしまっているだろう。このまま悪化の一途を辿れば、自分が誰なのかですらあやふやになるかもしれない。
だからこそ、ぼくは君にもっとより素敵な日々を提供できたらと思う。
日常に見え隠れする、ほんのささやかな優しいものを。終わってしまうのが悔しくて、どうしようもなく切なくなるものを。
──そんな日々を、君にプレゼントしたい。
ぼくが君を忘れるその日まで。
君にぼくの記憶を移植する、その日まで。
▶きっと明日も #21
10/1/2023, 7:10:42 AM