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どこまでも (長めです)

「2人なら、どこまでもいける。」
口には出さなかった。けれど、きっと私もハルカも同じことを思っていた。
ハルカは、私の小学2年生からの親友。
クラスが離れても、喧嘩しても、辛いことがあっても、気づけば2人一緒にいた。そして、一緒にいればそんなこと屁でもなかったかのようにいつの間にか忘れていた。
ハルカといれば、何も怖くない気がした。
なんでも出来る気がしたし、失敗なんか存在しない、そう思っていた。
ある時、ハルカは1週間学校を休んだ。
連絡も帰ってこないし、先生に聞いても何も答えてくれない。私は微かな疑問と寂しさを抱えてその1週間を過ごした。
翌週、ハルカは学校に来た。
「ハルカ!ちょっと、連絡くらいかえして...」
私がいつもの調子で喋りかけるも、ハルカの見た事の無いような暗い顔を見てなにか異常を察する。
「...ハルカ?」
ほんの少しだけ沈黙が続き、やっとハルカが口を開く。
「...ごめん、リナ。縁を切ろう」
「...え?」
急な絶縁宣言に頭が真っ白になる。
なぜ?どうして?1週間前は普通に仲良くしていたのに。原因を探っても探っても出てこない。
頭の中を精一杯整理し、私はやっとの思いで声をひねり出す。
「なんで...?」
目頭は熱かった。
視界も滲んでいた。
視界がはっきりしてきたころにはもうハルカの背中は小さくなっていた。

それから何年か経ち、私はまだ疑問と悲しみを抱えて生きていた。連絡先は消されたし、親御さんには連絡手段がなかった。
私はもう大学生だ。一人暮らしもしている。
ある時、母親から実家に帰ってくるよう言われ、実家に行くと母親が神妙な顔をして話を切り出す。
「...リナ、言ってなくてごめんね。実はあの時...」
あの時、というのはどの時かもうわかっていた。
やはり、親友を失ったあの日だった。
母親の話は、それはそれは衝撃的なものだった。
ハルカはあの時指定難病にかかったことを医者から知らされ、私を悲しませないように事情を話さず縁を切ったそう。
ハルカの親から連絡はあったが、ハルカの意向で私には話さなかった、だそう。
私は驚きと共に、喜び、そして悲しみも感じた。
私も母親もハルカのその後を知らない。
ハルカはもしかしたら亡くなってるかもしれない。
でも、どこかで生きているかもしれない。

私は今日もいつまでも、どこまでもハルカを探している。

10/12/2025, 11:15:34 AM