かたいなか

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8割童話、2割リアル調なおはなしです。細かい考察ガン無視なおはなしです。
最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が家族で暮らしており、そのうち末っ子の子狐は、不思議な不思議なお餅を売って、善良な化け狐、偉大な御狐となるべく修行をしているのでした。

そんな子狐、昨日の晩に、たったひとりのお得意様である某アパート在住の捻くれ者から、臨時の高収入を獲得しました。
捻くれ者が言うには、
ウチのバカジョーシがキューキョ「ユーキュー」を取って、「ジムサギョー」と「シリョーサクセー」を私にタイリョーに押し付けてきたから、料理の時間を削ってザイタクの仕事時間にあてたい。
とのこと。
お肉や野菜がたっぷり入った惣菜餅を、3日9食分。そこにおやつの計6個。しめて15個3000円。
コンコン子狐、いっちょまえに言葉は話せるので頭はそこそこ賢いのですが、なにせまだまだ生まれて○年なので、「馬鹿上司」だの「有休」だの「事務作業」だのはちんぷんかんぷん。
とりあえずお得意さんがいっぱいお餅を買ってくれた、それだけ覚えて、野口さんを3枚、代金として受け取りました。

「やった、やった!」
お札を3枚も貰った子狐。ぴょこぴょこ跳んで喜びます。ピラピラお札はキラキラ硬貨ほどキレイではありませんが、これ1枚さえあれば、子狐の欲しい物は、全部、全部手に入るのです。
「ピラピラが、こんなにいっぱいある!」
神社の家に帰って、寝て起きて朝ごはんを食べた子狐は、さっそく野口さん3枚と、小さなお気に入りの宝箱を持って、ちゃんと人間に化けてから、人混みごちゃつく商店街に走っていきました。

まず化け狐仲間の駄菓子屋さんで、子狐はチャリチャリキレイなおはじきと、コロコロかわいいビー玉を、野口さん1枚で買いました。
赤青黄色のビー玉と、おはじきとお釣りが入り、宝箱の中に色が増えました。
それから大狸の和菓子屋さんで、子狐はあまーい金平糖と、ちょっとカラメルなべっこう飴を、野口さん1枚で買いました。
白薄緑に桃色の金平糖と、明るい茶色なべっこう飴で、宝箱の中はもっと色が増えました。
最後に最近越してきた魔女のおばあさんの喫茶店で、子狐はあったかココアと、優しいスコーンとショートケーキを、野口さん1枚でご馳走になりました。
宝箱の中身は何も増えませんでしたが、子狐の心とおなかは、ほっこりいっぱいになりました。

「赤青黄色、白茶色、色がいっぱいだ!」
カラフルになった宝箱の中を、キラキラおめめで確認して、コンコン子狐は大満足。
家に帰ってそれから1日、その日のお日さまが暮れるまで、子狐は、おはじきとビー玉と金平糖と、べっこう飴とほんの少し残った硬貨を眺めて、幸せに、幸せに過ごしましたとさ。

5/2/2023, 9:50:24 AM