冬野さざんか

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 「明日学校に隕石が落ちたらさ」
 なんて、荒唐無稽な会話を始めた友達の顔を見た。明日は期末テストだ。
 学校なんてめちゃくちゃになってさ、テストなくなればいいのにね、なんて言うのかと思ったら、一旦そこで、手元にあった抹茶ラテのカップをつっつきながら言葉を切って、真剣な顔でこう言った。
 「そんな都合がいい隕石なんて落ちないか。それか、街丸ごとなくなっちゃうか……下手すると地球ごと粉々とか?」
 危うく飲んでたもの吹き出すとこだったから、慌ててストローから口を離して、恨みがましい顔をしてみせた。多分、口がにやけてるのバレてる。あたしとコイツの仲だから。
 「なんでいきなりそんな真面目になるかな」
 「地学の範囲が被ってたから」
 「そうだった。丁度その辺だったね」
 あー、数学と地学ヤバいかも、と、あたしの意識がそっちに向きかけた時、友達はもう一回同じことを、正確には、ほとんど同じようなことを、言った。
 「明日隕石が落ちたらさ。地球なんて木っ端微塵にしちゃうようなやつが」
 あたしはもう一回ストローを咥えようとしていたのをやめて、変にきらきらしたその目を見た。窓の向こうから差し込むほんの微かな太陽の光を反射してきらきらしたその二つの瞳はまるで星みたいだった。
 「そんときはさあ、ウチ、あんたとキャラメルマキアート飲みたいなあ」
 そんなことを言うから、あたし、やっぱり笑っちゃった。のこり少ないカップの中からキャラメルマキアートを啜って、飲み切って、頬杖ついて、笑う。
 「コーヒーもキャラメルも苦手なくせに?」
 からかうように言ってやったのに、そいつときたら頷いた。大真面目な顔で。
 「だってあんたが好きなやつだから」
 なんて言うから、ちょっと照れた。
 次の日、隕石は落ちなかったけど、あたしは抹茶ラテを飲んだ。

「世界の終わりに君と」

6/7/2024, 11:54:12 AM