無名

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「明日、もし晴れたら遊園地にでも行こう。
いろんな乗り物に乗ろう。そして君とクレープを買って半分こするんだ。

君は何を頼むのかな。やっぱり甘いもの系かな。もしかしてご飯系頼んじゃったりするのかな?」


「いや、でも最近、外は物騒だからね。家の庭で花を育てたりしてみようかな?」



そういうと君はとても怒ったような顔をして私に言う。





何を考えているの!って、馬鹿じゃないの!って、





酷いものだ。たった一人の恋人にそんな言葉をかけなくてもいいじゃないか。


全く少しは素直になってくれてもよいのだが。ツンケンしてばかりだとそのうちみんな居なくなってしまうよ。


そう思っていると君は俯きながら口を開く。




「私は、貴方さえいればいいもの。」




君の突拍子もないその言葉に、私は少し驚いてしまった。



「おや、嬉しいね。甘えてくれているのかい?」



私が問うと君は答える。



「だって、もう、貴方は、死んでしまうじゃない。素直になれる機会だって、もう、」


そういうと君は涙ぐむ。
私はその先を言わせまいと言葉を被せる。


「私は死なないよ。君の記憶の中で生き続けるからね。人の死は二度くるというだろう?」


涙ぐんだ君が少し嘲笑的に言う。


「それ、貴方が貸してくれた本にそのまま書いてあったわ。」




「ふふ、読んでくれたのかい?じゃあ、」


もう大丈夫だろう?、そう言おうとした。





「でもね、記憶の中だけじゃ寂しいの。あなたが隣にいなきゃ意味ないのよ。」




「だから、この事件の証拠を集めて貴方が無罪だってこと、証明しないといけないの。貴方と一緒に生きていたいから。冤罪なの、私は知っているから。だからね、もう少しだけ待っていて。貴方を救い出すから。」



「ふふふ、」


必死な君のその言葉に私は思わず笑ってしまった。

君の言葉は嬉しいけれど、これは上の立場の人間が関わっているから、君一人じゃ太刀打ち出来ないというのに。

それに、これに踏み込むと君が死んでしまう。


あぁ、この分厚いガラス窓さえなければ君に触れられるのに。




「な、何笑ってるの。こっちは真剣に!」


怒った君にまた私は言う。


「いやはや、私は幸せものだなあと思って。」


そういう私に君は少し怪訝そうな顔をする。










あぁ、もっと自由に君と生きていたい。



明日、もし晴れたら、君と共に。

8/2/2024, 3:42:47 AM