「わっと危ない!」
転びそうになる彼女を先回りして、咄嗟に腕から背中に手を通し、恋人の体重を支えた。
「セーフ!」
「ありがとうございます……」
青年はそのまま彼女の両脇に手を添えて、軽く身体を持ち上げ、足が路地から離れる。
「わっ」
そして、ゆっくりと路地に着地させた。
「怪我はない? 脇、強制的に引っ張っちゃったけど、痛くなかった?」
「あ、それは大丈夫です。でも……」
「でも?」
「重く……無かったですか?」
青年は頭にクエスチョンマークを飛ばしながら、少しだけ首を傾げる。青年にとって重いなんて思えなかった。
むしろ、彼女より重い人間を持ち上げることだってよくある。青年はそんな事をしているのだ。
「軽いほうじゃない?」
「いや、私、重いですから!」
さっき、持ち上げた時。そんなに重かったっけな?
青年は眉間に皺を寄せながら考えたが、そんなふうに思えず。分からなくなっていた。
瞳を閉じて考えていたが、パッと目を開けて彼女を全力で腕を伸ばして高く高く持ち上げる。
「わあっ!!」
そして、彼女の膝の裏を掴み、座るように抱き上げた。
「伊達に救急隊で鍛えてないよ。余裕だから!」
彼女には言葉にしないけれど、青年は考えていた。
いつか、真っ白なドレスを着ている君をこうやって持ち上げたいな……。
おわり
一五一、高く高く
10/14/2024, 1:22:50 PM