せつか

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「子供の頃、友達の家の立派な段飾りが羨ましかった。お雛様だけじゃなくて、リカちゃんでもシルバニアでも、立派な家やたくさんのドレスやお友達や家族を揃えてるのが羨ましくて、遊びに行くたびそれで遊びたがったなぁ。今思えば、やらしい子供だったと思う。特別貧しかったワケじゃないのに、私のオモチャはほとんどが従姉妹のお下がりで。だからリカちゃんハウスは古くて色褪せてたし、リカちゃんそのものも髪がごわごわでドレスも古臭かった。弟は新しい超合金のロボット買って貰ってたのにね。·····多分、だけど。いわゆる女の子向け玩具、ってのがお母さんは嫌いだったんだと思う。ビーズアクセサリー作るやつとか、編み物とかお菓子作るやつとか、そういうのは家に一つも無かったから。私は·····羨ましかったなぁ」

「はぁ、一気に喋ったら喉渇いちゃった。ん? あぁ、もう今は何とも思ってないよ。他所様と比べてもしょうがないし。ただ毎年この季節になると考えちゃうんだよね」

「大人になって良かったのは、子供の頃欲しかったものに手が届くってことかな」

そう言った彼女の部屋に、いわゆる〝女の子向け玩具〟や〝可愛いもの〟は一つも無かった。



END


「ひなまつり」

3/3/2026, 3:28:25 PM