12 生きる意味
理想の半熟目玉焼きを作るために、私は生きている。
毎日、朝は必ず目玉焼きだ。ぷるんと満月のように弾む黄身を、限りなく透明に近い膜が包む。
白身の広がった部分は、くっきりとした白色でしっかりとした二段になっているといい。
全体に照り照りして、新鮮で、まだまだ生きている、と思わせるような、躍動感あふれる、輝く目玉焼きだ。
黄身をつつくと、太陽のような濃い黄色がとろりと流れる。
あくまでも「とろり」だ。さらりとしていてはいけない。
ほんの少し熱が入ったのだなと分かる、絶妙の火加減。
理想に近いものができると、今日は絶対いいことがあると思える。
お皿にあけて、熱いまま思いっきりすすると、大地そのままのうまさが味わえる。その瞬間、まさに私は全力で生きている。
さあ、今日も目玉焼きを作ろう。熱いフライパンに卵を滑らせて。最高のやつを。
4/27/2023, 5:59:17 PM