もう一つの物語
「なぁ?この世界の他に、世界があるって知ってるか?」と友人が僕に言ってきた。
「はぁ?」と僕から間抜けな声が出た。
友人はそんな僕を見ながら、話を続けようとする。
僕はそんな友人に言う。
「そんなの作り話かなんかだろ。
なんつったけ?“並行世界”とか“Another World”とか言ったけ?そんなもんは所詮娯楽で作られたもんだろ。『本当に世界移動した』とか言って海外の奴らは動画にするけどさぁ…あれはただ単に寝ぼけたか、勘違いだろ。思い違いにもほどがあるだろ。」
僕が呆れながら言うと、友人はいつにも増して真剣な表情で僕を見つめる。
「…………………………」
友人は何か言いたげにしていた。
僕が「何黙ってんだよ。言わなきゃ分からんよ」と苛立ちを露わにしながら言うと、友人は周りに人がいないことを確認し小声で話し始めた。
「実は…“俺”は別世界の“俺”と入れ替わったんだ」
真剣な顔をしながら話す友人に、我慢できなくなり吹き出してしまった。困惑している友人を見てより笑ってしまった。
「そんなことねーよwてかいつも“俺”って言わねーじゃんw」俺がそういうと友人は「そうだよな!」と言って「嘘だよw」と笑っていた。
「やっぱ嘘じゃんかw」
「…嘘じゃないだけどな……」
この時僕が笑っているのを冷たい目で見ていたのは知りもしなかった。
もしかしたら本当に別世界があって、もう一つの物語が存在するのかもな。
10/30/2024, 4:22:52 AM