「……ねぇ、今ってほんとに秋……」
「だーもーうっさい!何回言うの!?」
ぐだぐだと流れるとある休日。2人並んで、公園にも満たないような微妙な空き地でアイスを囓っている。一昔前の小学生のような行動だが、我らは立派な令和の高校生である。
「だってさぁ……暑すぎじゃね〜……?」
そう言われるとぐうの音も出ない。今は9月も後半、そろそろ秋本番に入ろうかというところだ。現在気温は30℃。夏真っ盛りよりは涼しいが、依然として暑いのは変わらない。
「……それは同感……」
この時期にアイスを食べるなら、前は濃厚なバニラやチョコ系一択だったのだが。最近ではこの時期でも暑すぎて、氷菓を選びがちになった。
秋の足音が近付いては遠ざかるせいで、なんだか体調も良くないようだ。何とも言えない倦怠感で、ほぼ毎日だるいと口にしている気がする。
そんな、五月病のような状態になった2人が意味もないような話をしていれば、あっという間にアイスは食べ終わってしまった。手持ち無沙汰になって、アイスのパッケージを読んでみたり、棒をバキバキに折ってみたりはするが、あまり時間は潰せない。
「……スーパー行こうぜ。あそこなら涼しいし。」
俺は特に断る理由も無かったので頷いた。ついでに、このゴミも捨ててしまおう。あまり良くはないかもしれないが。買い物はきちんとするから今日だけは見逃してほしい。
スーパーに着くと、店内に入った瞬間甘い匂いが俺達を誘惑した。そう、焼き芋である。外の気温では到底食べようとは思わなかっただろうが、生憎店内は生鮮食品の保管のためか少し肌寒いくらいだ。
男子高校生2人は、気付けば湯気を立てる焼き芋を手に、よく日の当たる公園のベンチに居た。
「……暑いし熱い。」
全く同じ感想である。しかしまぁ、買ってしまったものは仕方ない。包装から取り出して、一口かぶりつく。どうやらねっとり系の品種らしい。砂糖とは違う品のいい甘さと、舌に触れる滑らかな質感が素直に美味しかった。
「……美味いけど暑い。」
思わず口に出た一言に同調するように、横に座る男も頷いた。
秋真っ盛りみたいなことをしているのに、秋の足音はまだまだ遠い。俺達は秋の訪れを心底待ち遠しく思いつつ、早めに引き寄せてしまった手元の秋を食んでいた。
テーマ:秋の訪れ
10/2/2025, 5:41:32 AM