SAKU

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いつもの如くなんの前触れもなくドアベルを鳴らした友人が、いつもの如く俯きがちに首を傾いで近寄ってきた。
椅子を引いて着席を促す。そこでようやく挨拶がなされた。
猫背気味で、やや隈の目立つ青白い顔は、外気で温められても温度が感じられない。
ふむ、と。ちょうどお茶でもするかと出していた白磁の茶器を一旦戸棚へと戻す。
茶葉も戻して、代わりを取り出した。
友人はそんな自分の様子を静かに見つめている。
湯気が立つやかんから、ガラスのティーポットへとお湯を注ぐ。中がすっかり見えるティーポットの中にはすでにころんとした茶葉が鎮座していた。
自身の動きの一挙手一投足を漏らさぬ様にとしている相手によく見えるよう押し出してやる。
固く閉じた花を模した茶葉が徐々にほころんでいくのがよくわかるだろう。
手からティーポットの中身に視線を移した相手は茶葉に比例して目を見開いていく。あらゆる角度から見ようと頭をくるくるティーポットの周りを回していた。
静かにティーカップに注いでやると、両手で大切そうに受け取る。
尋ねてきた時には青白かった頬は少し紅が差し、隈が目立つ重い瞼に隠されていた瞳がキラキラ輝いていた。

7/24/2024, 10:04:29 AM