何も見えない暗闇を掻き分けて、
あるかどうかも分からない地を蹴って、
ひたすら我武者羅に走った。
走り始めてからもうどれくらい経つだろう。
地を踏む感覚はあるのに動いている気がしない。
それでも止まる訳にはいかないのだ。
どうして走るのかはもう覚えていない。
いや最初から確かな理由なんて無かった。
ただ走らなければならない、と
そう、思った。
止まったら終わる。
止まったら失う。
止まったら、再び走り出すことは出来ない。
強迫観念に似た何かが私を駆り立てた。
走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ。
止まるな止まるな止まるな止まるな止まるな止まるな。
ふと、腕を掴まれた。
とても強い力で。
名前を呼ばれた。
とても大きな力強い声で。
その瞬間
落ちた。
真っ逆さまに。
まるで地面が抜け落ちたみたいに。
腕を掴んだ者も共に落ちる。
どこまでも深い深淵に。
腕を掴む力は未だ強い。
まるで二度と離さないと言いたげに。
ふと、思った。
私は、
もう
頑張れない。
ごめんね。
さよなら。
5/30/2022, 12:31:28 PM