「君と一緒に」より続き
次の日、吹雪(ふぶき)はいつも以上に仕事をはやく始めて終わらせる努力をしていた。夜(よる)は昨日の内に終わらせてしまっていたらしい。
「こっちでーす」
吹雪が手を振って遠くから歩いてくる夜を呼ぶ。吹雪のライトブルーの髪、白い瞳が星に照らされて光っている。まるでライトの換わりと言わんばかりに。
「ここです。ここがよ、く見えるんですよ」
ぽんぽん、と吹雪は地面に倒れている大木を軽く叩く。
「時間として、はもうそろそろですかね」
「会話モードに切り替えます」
「そのモード切り替え、大変じゃないですか?」
「僕はモード切り替えを取り付けた初めての個体のため、研究の一貫として切り替えを行っています」
「なら、仕方ないですね...」
よいしょ、と吹雪は大木に腰かける。その隣に、夜が静かに座る。
「ここ、何にもないで、すよね~」
「未だに新たな発見はありません」
「そうなんですよね......この流星群も、200年前に見つけたものですし...あ、来ましたよ」
吹雪が空を指差す。
一つ星が落ちる。
また一つ星が落ちる。
そうしてどんどん星の数が増えていく。
「わぁ…綺麗ですね...!」
「風情があります」
「そう、だ!雪(ゆき)にも写真を___」
そこまで言うと吹雪は写真機能を一時停止し、写真を撮ろうとするのをやめた。
「写真はいいのですか?」
「......はい、きっと雪もどこ、かで見てるでしょうし」
そう言う吹雪は少しどこか寂しそうだった。
「...人は、天寿を全うすると、星になるそうです」
「人が無に還るのではなく、星になって宇宙に漂うという言い伝えですね」
「夜は…星にな、ると信じていますか?」
「言い伝え通りになるならば星になるでしょう」
「夜自身、はどう思っていますか?」
吹雪は夜を見る。吹雪の白い瞳に星が流れている。
「僕は、信じていません。所詮は言い伝えです。生物学、天文学的には証明されていませんので」
「そうですか...」
吹雪は少し目を伏せる。そして、再び夜を見る。
「僕は、信じて、います。言い伝えだとしても、僕は信、じています。きっと、星になって見守ってくれていると...そう思っていま、す」
流星群に照らされた吹雪の瞳は静かに輝いている。
「そうですか」
「夜」
夜が流星群を見ようとすると、吹雪が夜の名を呼んだ。
「なんでしょ___」
「貴方に会えて良かった」
一つ星が落ちた。
「僕も、貴方に会えて良かったです」
夜はそう答えた。吹雪はただ笑うだけ。
「吹雪?」
夜が呼び掛けるも、返事は返ってこない。
吹雪の灰色の瞳はただ、星を写しているだけだった。
お題 「星のかけら」
出演 吹雪 夜
1/10/2025, 8:10:24 AM