ほろ

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今年こそ離婚です、と真っ白い肌の妻が背を向けた。
毎年のことだけれど、今年は一層決意が固いらしい。
地上は猛吹雪。人間たちの「寒暖差やばくね?」という声が聞こえる。
「すまない。君が通販サイトで散財するのと、俺が地上でコンビニスイーツに散財するのとでは訳が違うよな。貴重な人間用通貨を使ってしまって申し訳ない」
「いいえ、今年は引きません。地上なんて雪に埋まってしまえば良いんだわ!」
妻は雪の神だ。きっと有言実行するだろう。
周りにとってはしょうもない喧嘩かもしれない。しかし、ここで妻の機嫌を直さなければ、地上は春夏秋冬ではなく冬冬冬冬になってしまう。
「悪かった。機嫌を直してくれ。このまま猛吹雪が続けば、君の大好きな通販サイトの荷物も届かなくなるぞ」
ピクリ。背を向けている妻の肩が跳ねた。
よし、もう少し。
「今後、コンビニスイーツを買う時は君に相談するよ。散財はしない。買ったら君と一緒に食べる。約束だ」
「…………言ったわね?」
猛吹雪が小雪まで落ち着く。いける。
「もちろん、生涯忘れないと誓おう」
「通販サイトで散財しても文句言わない?」
「ああ。むしろ俺にも使わせてほしいくらいだよ」
「……分かったわ」
振り向いた妻の顔は、ほんのり赤くなっていた。
アナタって、本当優しいわよね。パッと飛びついてきて微笑む。
俺はホッとして、妻を抱きしめた。
やったぞ、地上の人間たち! 今年は恐らく、最後の日まで冬晴れだ。

1/5/2024, 12:46:22 PM