―― 一人の姫のためにこの王国は滅ぶだろう
ある王国で美しいお姫さまが誕生した。
珍しく恋愛結婚した王様とお妃様にはたくさんの子どもがいて、占い好きなお妃様の意向に沿って子どもが生まれるたびに占い師に未来を占わせた。
末の姫も占われ、上記の予言がされた。
不安になった王様とお妃様は姫を地下に幽閉し、姫の存在を隠した。
王城の地下で姫はすくすくと育った。
プラチナブロンドの長い髪と空色の瞳の美しいお姫さまは自分の立場をよく理解していた。明るく天真爛漫な子どものように振る舞いながら、誰にも教えていない能力を隠し続けた。
ある日、隣国の王子がやってきた。
本人が望まない王位争いに巻き込まれ、呪われた不運な王子さまだった。どこに行っても嫌われてしまう王子を助けたのはお姫さまだけ。こっそり自分の部屋に匿って秘密の能力を使って王子の呪いを解いた。
後日、王子は嬉しそうに国に帰っていった。
また別の日、捕虜になった獣の国の姫に出会った。
城内を必死で逃げ回っていたところをお姫さまが保護し、匿った。酷い扱いを受け衰弱していた姫を、秘密の能力で癒した。
後日、姫に抜け道を教えて国外へ逃がした。
お姫さまが成人を迎えた年、王国は滅びた。
王位を継いだ隣国の元王子と、再建した獣の国の元姫によって攻め滅ぼされたのだ。
生まれて初めて踏みしめる大地にお姫さまは喜んだ。
美しく笑うお姫さまに元王子と元姫は王冠を授けた。決して血に塗れた欲深な王冠ではなく、お姫さまだけの王冠を。
予言通りこの王国は滅んだ。
そして新たに帝国が建った。
近隣の国々を手中に収めた。
「予言通りでしたね、お父様、お母様」
黒いユリを一輪、墓前に供えた。
【題:美しい】
6/11/2025, 1:06:54 AM