東の飯屋に恋する男

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伝えたい


ヒロは自己肯定感が低い。
俺が言えたことではないが。
彼は誰かの人生に自分の存在や居場所を作ることに罪悪感を感じている。実際、俺が魔法使いであると知る前は、ヒロがこちらに踏み込んでくることはなく、一線を引いた距離を保っていたのだ。何度も謝りながら想いを伝えてきたヒロを今でも鮮明に思い出せる。誰かの特別になる事を避ける彼が、それでも俺といたいという意思を見せた事がむず痒くも嬉しく、彼の事が気に入っていた俺は二つ返事で了承してしまった。人と深い関係になる事を避けるのは自分も同じだし、当時は二つ返事をした後に本当によかったのかとかなり頭を抱えたが、今ではこの暮らしをかなり気に入ってる。
そうしてヒロと同棲を始めて数ヶ月、心地よい生活であるのは確かなんだが、どうにも拭いきれない悩みがあった。俺からの好意が、ヒロに全く伝わっていない。確かにストレートに想いを伝えた事は数える程しかないかもしれないが、それでも普段からこう…さりげなく、なんとなく、あんたが特別なんだって伝えているつもりではあった。最早鈍感とかいうレベルではない。ヒロには自分が誰かに愛されるという考えが微塵も存在していないのか?多分そう。そもそも同棲までしてて、手も繋ぐしキスだってする。それなのに俺に好かれてる自覚がないなんてどういう思考回路してんだ。流石にそろそろ、どうにかして伝えるべきかもしれない。俺は既にあんたの事がめちゃくちゃ好きだって、ちゃんと伝える。

2/12/2024, 4:48:47 PM