『もしも未来を見れるなら』
「もしも未来を見れるなら、貴方はどうしますか?」
これは驚いた。
牛が産気付いて徹夜で介助をしていたら、出てきたのはバケモノだった。
体は普通の牛なのに頭だけは人間で、話もする。
祖父がさらにその先祖に聞いたという話を思い出した。
必ず的中する予言をして、数日で死んでしまう件というバケモノ。
それが稀に生まれるらしい、と。
「あの、聞いてます?」
件のバケモノは変わらず普通に話しかけてくる。
「予言するんじゃないの?」
「質問に質問で答えるのは良くないですよ」
牛のバケモノに諭された。
機嫌を損ねて予言せずに死なれても困るので、とりあえず謝っておく。
「で、未来、見たいですか?」
「見れるなら見たいと思うだろ、普通」
「普通でなく、貴方に聞いているのですよ」
思いの外よく喋る奴だ。
鼻息荒く、俺の返事を待っている。
俺はよく考えてから口を開いた。
「見たくないな」
そりゃ世界滅亡とか大震災とか、あるなら知りたいとは思う。
でもその未来を見たいか言われたら、見たくない。
だって目の前で人が死んでいったりするだろ。
そんなのは見たくない。きっと見たら夢にも見るし、トラウマになる。
「そうでしょう! 私だって見たくないんですよ」
「でも予言は知りたい」
「嫌ですよ、予言したら死ぬんですよ、私」
「そのままでも数日で死ぬらしいぞ」
「えーそんな殺生な」
奴はぶつくさ言いながら、未来を見始めたようだ。
「えー、予言しますー」
「おぅ」
「貴方の今日の夕飯は私だそうです」
奴はそれだけで言って息絶えた。
え、俺、これ食うの?
4/19/2024, 1:40:54 PM