かたいなか

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最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。お題回収役その1は、名前を藤森と言いまして、花咲き風吹く雪国の出身。
近所の稲荷神社は深い森の中で、いつか昔の東京を残すように、日本在来の美しい花がとても多く残っておりますので、
たとえば早春のフクジュソウ、あるいは初夏のアヤメやカキツバタなんかのシーズンには、
お参りがてら、お稲荷様を讃え飾る季節の花々を、パチパチ、スマホで撮っては愛でるのでした。

ところでそんな藤森、最近気候変動等で、美しい花々が段々日本から姿を減らしてゆくのを、とても寂しく思っておりまして。
花の保護、種の保存、生育環境の整備改善方法を、
なんと、異世界の技術に求めました。

というのも藤森の知人に「世界多様性機構」なる異世界から来た組織の女性がおりまして。
(このおはなしは こんな系のフィクションです)
多様性機構なる厨二ふぁんたじー組織のその女性は、お題回収その2。ビジネスネームを「アテビ」といい、機構のひよっこ新人さんでした。

さて。 藤森がその日も稲荷神社の森で、最高30℃の真夏日から逃げておると、
藤森がそこに居ると予想しておったアテビが、3枚のチケットを持って、明るく走ってきました。
「藤森さん、藤森さん!」
アテビが持っておったのは、その日の静かなアートイベントの入館チケットでした。
「一緒に行きませんか、藤森さんと、藤森さんの後輩さんもさそって、ぜひ!」

「『AIで描くリアルな空想花展』?」
チケットを受け取った藤森、最初はそれを、アテビに優しく丁寧に、返そうとしておりました。
「申し出は嬉しいが、私は芸術にうといんだ」

「大丈夫ですよ、藤森さん!これ、『AIで描いた』っていうのはウソで、本当は写真展なんです」
「しゃしんてん??」
「本当は、世界多様性機構が企画した、東京在住の異世界人さんの故郷の花を集めた写真展なんです」

「異世界人の故郷の花……」

「最近、この世界もリアルな動画や画像を生成できるようになってきたでしょう?」
他の世界の、本物の花か。 そう言われるとチケットを返すわけにもいかない藤森。
アテビは企画展のからくりを、藤森に説明します。
「だから、『これは自動生成の空想です』ということにして、AIを隠れ蓑に、異世界の花を集めて異世界人同士の交流会を、こっそり、やろうと」

アテビいわく、東京には複数の、異世界人がこっそり隠れて、住んでおるそうです。
彼等は滅んだ世界から逃げてきた難民。
彼等は故郷が亡くなってしまった異世界人。
世界多様性機構は「密航」のカタチで彼等を「こっち」の世界に連れてきて、東京に新しい家、新しい生活基盤を、提供しておるのでした。

なお、もちろんギリギリどころか結構違法です。
(違法渡航・定住、ダメ絶対 by 世界線管理局)

「異世界の花か」
ぽんぽんぽん。後輩に一応、お誘いのメッセージを打って、送って、スマホをしまって。
「今日これから、もう、行くのか?」
ソッコーで「ノ∀`) ムリポ」が来たので、藤森、後輩のことは放っておくことに。

「後輩さんが無理なら、ぜひ、もう行きましょう」
藤森が異世界の花に興味を示してくれたので、アテビはもう大感激!さっそく案内します。

さあ行こう、さあ行こう。 
隠れ蓑の下に集まった、滅亡世界の花の写真展。

藤森とアテビがレンタルイベントスペースに設置された「空想花展」の会場に到着しますと、
見た目は普通の人間にしか見えない異世界人も、
普通に日本で生まれた日本人も、
なんなら観光に来ていた外国人も、
当日券を購入して、「AIが出力した異世界の花」という名目の写真を、楽しんでおりました。

「ん?」
ところで、飾られた額縁の下、キャプションの隣に、スマホで読み取れそうな二次元コードが。
「これは?」
藤森がスマホを取り出して、コードを読み取ろうとカメラを起動した、その、直後でした。

バン!
大きな音が鳴って、数秒の間だけレンタルイベントスペースは、停電の完全真っ暗!
数秒の停電だったので、照明はすぐ元に戻ったのですが、おや、二次元コードが有りません。
「んん???」

結局のところ、コードは何だったのでしょう?
数秒で回復した停電は、何だったのでしょう?

さあ行こう、さあ行こう。
多分次回のおはなしで、裏側が判明、
多分、多分。 すると、思います(予防線)

6/7/2025, 4:22:34 AM