【ミッドナイト】
午前0時を回ったころ、私はひとりカクテルを喉へと流し込む。
照明はつけず、カーテンは開けてあるものの今日は星ひとつ見えない曇り空。明かりはダイニングテーブルの上にあるランタンだけ。
0時を回ればシンデレラは魔法がとけるというけれど、私はたいてい、夜中にようやく魔法がかかる。
ランタンのぼんやりとした光に照らされた、深い赤紫色のカクテル。これを一杯飲むだけで、ほんとうの私は内側のほうにひっこんでしまう。
………ステージの上。
身に纏うのは赤色の豪奢なドレス。カクテルで少し火照った頬はほんのり桃色に色づいて、音が響く高いヒールで大胆に歩みを進める。
観客の視線、スポットライトの光…この瞬間、すべては私のためにある。
美しく艶やかで、優雅に、華やかに舞う…このステージのアゲハ蝶。
誰もが私の歌に酔いしれ、演技に目を奪われる。
いつもは内気で気が弱い私だけど、ひとたびステージに立てば、そんな私はおやすみなさいの時間。ほんの少し、カクテルの力も借りてるけどね。
どんな人にも、輝かしい瞬間はあるものなのかもしれない。私がこうして輝けるときがあるように。
ステージにいるときの私は、
_____________最高のミッドナイトシンデレラ。
1/26/2024, 12:00:47 PM