西鳩シェフは、一等地の三ツ星レストラン"フェデトワール"で、料理長を長年務めてきた。卓越した料理の知識、技術、センスを備え、温厚な人柄で弟子たちからも尊敬されていた。
ある日、寝癖頭の弟子が
「シェフ、次の世界的料理人に贈られるキュイジーヌグランドール賞を狙いましょう」と言った。
その時、西鳩シェフは
「賞のために料理をしてるんじゃない」と答え、弟子の寝癖頭にイライラして、ついフライパンで弟子の頭をこづいてしまった。
弟子の頭からチカチカした星が3個出た。
このことで、西鳩シェフは弟子に訴えられ、ニュースにも取り上げられた。
そして、西鳩シェフはフェデトワールを自ら辞めることを決意した。
その後、西鳩シェフは地元に小さな家庭的ビストロを開店した。良心的な価格設定で、評判はすぐに広まり、半年前からの予約が必要なほど繁盛した。
かつてのフェデトワールの弟子の中から2人が、彼のもとで働きたいと願い出て、彼らは西鳩シェフの教えを受け継ぎ、特に寝癖には注意を払った。
こんな西鳩シェフは、以前よりも充実した毎日を送っている。星なんていらないものだなと感じている。
「手放す勇気」
5/17/2025, 12:01:59 AM