『軌跡』『風と』『sweet memolies』
西暦7777年、縁起のいい数字の並びに、世界はお祭り騒ぎだった。
そして人類が滅亡することなく、ここまで命を繋いだ功績を記念して、一度歴史を整理しようという話になった。
しかし人類の歩んだ軌跡は、綺麗なことばかりではない。
戦争、弾圧、虐殺……
目を背けたくなるような出来事も多い。
歴史を語る上で、避けては通れない問題である。
だが、めでたい事にケチを付けたくない。
なので目を背けることにした。
見たくないなら見なきゃ良いのである。
sweet memolies project。
都合のいい人類の歴史だけを纏める一大プロジェクトは、こうして始まったのである。
だが一つ懸念事項があった。。
編纂を行う人間が、良心の呵責に苛まれて、真実を書き記す可能性があるからだ。
生半可な人間では、この事業に相応しくない。
そんな考えから入念な調査が行われ、ある人物に白羽の矢が立った。
名前は、吉田茂。
過去の日本の総理大臣と同姓同名の男である。
この男、まるで総理大臣の吉田の生まれ変わりのように、人を食ったような性格であった。
頭と根性は生まれつきよくないし、口はうまいもの以外受け付けず、耳の方は都合の悪いことは一切聞こえない。
その上、外見は真面目な青少年風と、一目だけでは内面を見抜けない。
それを利用して人をからかったりと、率直に言って、たちの悪い人間であった。
普通であれば、こんな人間に人類史に残る一大事業を任せることはない。
だが今回に限り、これ以上ない人物だと太鼓判を押された。
彼ほど自分勝手なにんげんならば、都合の悪い歴史は全部無かったことにできると期待されたのである。
こうして吉田は、プロジェクトのリーダーに抜擢されたのだった。
しかし人類は忘れていた。
彼は人を食った性格であることを……
彼はリーダーを任されるなり、部下たちに言い放った。
「んじゃ、プロジェクトの予算使って、うまいもん食いに行くか。
なに、横領は犯罪だって?
大丈夫だよ。
都合の悪いことは、全部無かったことになるから」
5/4/2025, 12:44:25 PM