SAKU

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行こうと純粋にひかれた手がどれだけ嬉しかったかきっと彼の人は気づかないだろう。自分も、今後一生気づかれないのを望んでいる。

数年前の思い出を繰り返していると、本人が目の前にやってきた。
昔、数年前という人によっては最近と呼称される時の流れの前のことを考えていた。
自身と相手が向かっても向かわなくても構わない、些細なことだったように思う。何か——任務か事件か——があったように思うけれど、そのこと自体は覚えていない。何より、自分たちの力はなく、日常であったもので。とりあえずそんなに悲壮なことではなく、あるいはそう告げられて、好奇心が大半に向かったことは覚えている。
当時の自分は不思議に思うことは多かったが、それ自体が世間一般に疑問に思われることなのか、常識的なことなのか分別がつかなかったので反応に困った。認識の差異自体を自覚するには至った頃だったけれど。
自分が異質なことに対して知識ではなく経験で自覚した頃の呼び出しに、周りが少し見えるようになった呼び出しに。
何も、思惑も衒いも気遣いもなく、当たり前に隣に、ともにあるものだと行動に示されたことにどれだけ自分が涙を堪えたのか一生気付かないてくれと、今の自分は思う。

同行者たちが、困っている人間か、絡んできた人間か、それとも好奇心で首を突っ込んだか。
助けを求めているのは、目の前の人物が訪ねてくる前に耳にしていた。
それでも待っていたのは——
さて、では向かおうかと腰を上げる。
今度は自分が彼の人の手を取るために。

7/15/2024, 9:25:04 AM