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 緑生い茂る森の中、色鮮やかな鳥が羽ばたく分かれ道。

「右か左か」
「同じに見えるような」

 俺たちは絶賛迷子になっている。脚を踏み入れた目的は素材の採取。この国独特の植物に興味のある君はこの機を逃すまいと鞄を背負って待ち受けていた。
「戦闘任務じゃないけど危ないから…」
「あなたの力になりたいの。たまにはいいでしょ?」
 可愛く小首を傾げ言ってくるんだから俺は頷く他なかった。君のお願いにはつくづく弱い。
 森は迷いやすいため対策として地図に目印をつけたものの、その地図を採取中に失くしてしまったのだった。
 幸い採取は終えたが肝心の帰り道がわからない。歩く先々が分かれ道になっていた。右、左、右…。こんなに複雑だったろうか?森に惑わされている気さえする。

「決めていいよ」
「さっきも右に行ったけど右で!」
 自信をもって右の道を行きくるりと振り返る君はとても申し訳なさそうに
「違ったらごめんね」
「『たとえ間違いだったとしても』君と一緒なら楽しい道のりだよ」
 迷ったことを口実に。君といられる時間が増えるのなら俺には得しかない。このまま今日は野宿だろうか。普段ないシチュエーションは俺にも君にとっても刺激的で忘れられない体験だろう。

4/23/2023, 8:14:32 AM