一般人

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ー安心と不安ー
「──あぁ、ようやく終わった、これでもう何か言われることもねぇ…一安心だな。」

そんな独り言を呟いたのは、自分の仕事が片付いた頃。
ただ1人、その場に立っている自分以外にはもう誰もいない仕事場には、どんよりとした空気が流れる。
初めは仕事が終わった時に快感を得ていたのに、最近では安堵が真っ先にやってくる。
俺は仕事上、1人で任務をこなしているから、歳も重なっている最近では任務遂行が不安になっているのかなぁと思っているが…
(にしても最近、毎晩風呂に入る割にゃーどうも臭いな…もしかしてこれが加齢臭ってやつなのか、?)
全く、恐ろしい話だ。考えるのはやめにして、もう暗いしさっさと帰ろう。

「────。、」
「──、───────!!」
なんだろうか、話し声が聞こえる。
2人の声。
いや、話し声というか、泣き声、叫び声だろうか…
聞こえる声は、方向的に仕事場の表に出たところのようだ。
俺は気になってそっちに行ってしまった。

「何だこれ。、」
「誰だ、誰がやったんだ!!」
さっきの2人の声が鮮明に聞こえた。
俺は位置的に背後から近づいた。
『コツ…コツ…』
コンクリートに革靴の足音が響いた。
泣き叫んでいた2人も、近づいてくる音にやっと気づいたようだ。

驚いた2人に俺は声をかけた。
「すまんな、こっちも仕事でやってるんだ。残業代なしに働かされてるこの大人に少しでも情をかけてやっておくれ。」
2人は声も出なくなっていた。
2人は不安を超え、恐怖をこえ、死を悟ったようで、諦めたくはないような歪んだ表情をしていた。

洗っても落ちないくらいの人の腐敗臭が染み付いたこの男は、自分の仕事がおかしなものとも思わず、疑わず、ただ、淡々と任務をこなす。

そう、この男は暗殺者であったのだ。

───end───

ここまで読んで頂きありがとうございます。
タイトルから随分と離れた内容になってしまいました
初めは職1つで生きていくのが不安で、なんとかやりくりして安心した毎日を送る、という男を書こうとしたのですが、思いつかずに段々と雲行きが怪しくなってしまいまして、結果もう、思い切って殺人鬼にしてしまいました。
少しずつでも、ストーリー性のある物語も書いていけたらいいなぁと思っております。
重なりますが、最後まで読んで頂きありがとうございました。

1/25/2024, 11:14:28 AM