それは身の丈に合わない恋だった。
私は自分でも理解できるくらい地味で、内向的な性格。お洒落とか興味なかったから未だに理解できないし、流行りの物もよく分からない。
そんな私でも人並みには恋に憧れを抱いていた。いつかみんなみたいに出来たら良いなと、思いながら日々を送っている。
代わり映えの無い日々の中で、趣味に没頭する毎日。それでも幸せだった。きっと私はそうやって生きていつの日か死んでいくのだと思っていた。
そんな時に、私とは住む世界の違う人と出会い⋯⋯何故か告白された。
その人はかなりお洒落でキラキラしている我の強い人で、告白を断った私に対して何度も付き合ってと粘着され、結局折れた私は付き合う事になる。
初めての彼氏だった。放課後デートでカフェ行ったり、休日に遊園地とか映画見に行ったりと⋯⋯本の中でしか体験出来なかった事を現実で体験する。
自分には縁がないと思って諦めていたのに⋯⋯彼は色んな事を体験させてくれた。そのどれもが新鮮で楽しくて、前の幸せとはまた違う幸せを感じていた。
私の好きな事にも寛容で、否定せずむしろ肯定してくれる様な優しい人。
それなのに、急に連絡が取れなくなった。
心配で、心配で、私はとりあえずその事をLINEで伝えて彼からの返事を待った。
ようやく返事が返ってきたと思ったら、なんと彼のお母さんからで彼は今、病に伏していると言う。それもドナーが必要な病気で入院しているのだと言われた。
病状はあまり良くないらしく、このままだと余命宣告される可能性もあると言う。
だから別れて欲しいと、彼からの伝言を伝えるために連絡してくれたそうだ。
その頃にはもう、私自身彼を好きになっていたから別れたくない―――それなら最後まで一緒に居たいと告げたが、彼自身の意思が固いそうで結局別れることになった。
何日も何日も部屋に閉じこもって泣いて、泣いて、泣き腫らして⋯⋯ようやく涙が枯れた頃に、私はある決意し数日ぶりに部屋から出ると、食事を取りシャワーを浴びてから身支度を整え目的の場所へと向かう。
そこで検査を受けて結果を受け取りそれを確認した後、私はあの日から準備していた計画を実行する。
きっと両親は反対するだろうから、この方法しか選択肢がなかったのが残念だけど⋯⋯しかし、今の私は清々しい程に後悔の念などなかった。
“きっと上手くいく⋯⋯大丈夫!”
そう自分に言い聞かせると、私は両親の帰宅時間を逆算して時間調整すると、ドアノブに引っ掛けたタオルを首に掛けると勢い良くその扉を開け放った。
6/4/2025, 11:45:22 AM