マシュマロの美脚

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【踊るように】



『私を舞う』(短い)


私は役者
舞台上、舞い踊る。

皆私を見て魅了させる特別な舞い。
皆私を見ている。
魅了の輪は世界に広がり、皆私を見る。

毎日働くあの人も、無邪気に遊ぶあの子も、塀を歩く猫すらも、私を見る。

お金持ちは舞をみ、魅了され、
私に【踊らされる】お金持ち

私の舞は特別なもの。


お金も、
名声も、  
権力すらも
手に入らないものは無い。


ただ一つ

私がこの世で手に入らないものは私の自身を見る人だけ。
それでもいい。
゛私゛を演じてればいい。









『舞と恋』(長い)

「かっこいい」

それが私が王太子殿下を初めて目にして、思ったことだ。
私だけじゃないだろう。
王宮に集まるほとんどの貴族は王太子殿下に見惚れていた
当たり前だろう。それほど王太子殿下は美形だった


今日は王太子殿下のお披露目だ。
全ての貴族が集まる。
そんな中で王太子殿下は剣の舞を披露した。
剣はスラスラと動き、無駄がない。
踊るように剣を打ち合い、圧倒する。


そんな物を見せられたら皆惚れるだろう。
勿論私もそうだ。
頭の悪い貴族は皆、婚姻を申し込むだろう。
王太子殿下と婚姻なんて絶対に出来ないのに。

王太子殿下の婚姻は大きな利益が見込まれる。
他の国の王女様を娶れば交易や国交を結べる。
他にも婚姻を結んでいない王太子殿下の場合は国交を結びたい国から-送り物を-もらえる。(賄賂のこと)
送り物を貰っても絶対に婚姻を結ぶ必要はない。
利益だけが見込める。

つまるところ、よっぽどのことがなけりゃ国内で婚姻を結ぶ事は無いだろう。
しかも、結ぶとしても公爵家から取るだろう。
下から二番目の子爵なんかが王太子殿下に婚姻を申し込むなんて不躾極まりない。

この恋は胸にしまう。
貴族は当たり前にするだろう。
皆、我が身を滅ぼしたくないのだ。


それでも諦めきれない。
王太子殿下と下級貴族が関わりを持つ機会はほとんどないが、あるにはある。

1.武術を磨き王太子殿下の近衛兵になる。
2.勉学に励み総司になる。
(王様とは別で国全体を動かす力が与えられた役割)
3.舞踏会でな舞を壇上で披露し、王太子殿下の妾になる。

大体はこの3つだ。
女性ができることは舞を踊ることくらいしか無い。
しかも舞踏会で壇上に上がるのは貴族、数百人から5人しか選ばれ無い。
それこそ狭き門だ。


それでも、諦めれない。
理由なんて無い。
ただ好きになってしまった。



それから数年、舞に全てを注ぎ込んだ。
やめたくなる時もあった。
泣いたこともある。
それでも王太子殿下に見初められたい。


私はついに壇上で舞を踊れるようになった。
ここまで来るのに7年かかった。

初めての壇上で見た景色は忘れられない。
王太子殿下がこの目ではっきり見える。
こちらを向き、にっこり微笑む顔はこの場でしかはっきりと見えないだろう

舞踏会が終わり王太子殿下は来年、指揮をとる。
つまるところ戦争だ。

王太子殿下が絶対に帰ってこれるとは言えない。
最後の舞踏会の可能性もある。
壇上は30までしか居られない。
それまでに戦争が終わるかもわからない。

壇上から降りる。
もうこの景色は見れないかもしれない。

怖い。
最初で最後のチャンス
一寸の狂いも無いように、舞を踊る。









『良い舞であった』







王太子殿下はそう言った。
今までの努力が報われる。
私の夢は叶わなくなったが、頑張って良かった。




私は今夜も舞を踊る
戦争から帰ってきてくださることを願い。

9/7/2024, 1:19:19 PM