青花一華

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♯日常

ひどく日差しが照り付ける7月某日。皆が寝静まり、泣く子も黙る丑三つ時。目を閉じて。意識を研ぎ澄まし、耳をすませば、聞こてくる。
「○○。○○ってば!働け、ニート!あの回し車で走るハムスターのように!!」
彼は言った。私をニートだと。視界を開けると、私の顔の前5cmほどの位置に、半透明の和服美青年(個人差あり)が眉を釣り上げて睨んでいた。てやんでい、一体全体なんで私が、こんな得体の知れない空中浮遊美青年に働けなんて言われなきゃならんのだ。あぁ、私の愛ハム「キャベツ太郎」と人間社会を一応生きながらえている神(私)を比べられるだなんて。ひどいヤツもいるもんだ。彼は、半透明の体を泳ぐようにくるりと一回転させて、私の右耳に顔を寄せ語りかけてくる。
「○○。君がいないと僕の力は元に戻らない。今日だってこんなに力が足りないんだ。見て。」
そう言って、彼は私の頬に口付けるとポンッと大きな破裂音が聞こえ、彼の姿は白煙で見えなくなってしまった。そして、煙の中から現れたのは、あらまあ。可愛らしい、「お狐様」ではありませんか。かわいいの権化、しかしこのお狐様は普通の狐とはいろいろ違う。まず、全身真っ白のポメラニアンのような毛並みをしていて丸っこい。毛玉族であろう、そのフォルムはキャベツ太郎と並ぶほど愛らしくて撫でる手を止められない。お狐様は、小型犬サイズのぬいぐるみのような軽さなので、抱き心地もバツグン。よき眠りの友になるのである!
「こら!!○○!僕を抱き枕にしないで!仕事しろニート!」
痛たたたた、顔面パンチヤメテ下さい。一応美少女を生業としてやらせてもろてる私の取り柄奪わないでいただきたい(自称)。お狐様は、光沢感のある毛並みをふぁさふぁさとなびかせながら、しっぽをフリフリしている。なんだかんだ撫でると喜ぶんだよ、このワンコ。だがしかし、そろそろ癒しの時間はおしまいにして、真面目なお仕事の時間だろう。カーテンの隙間から差し込む窓の外の光が、赤黒く私の部屋を照らしている。私は、お狐様の頭をいい子いい子しながら、仕事の話の続きを促した。
こんな私の平和な「日常」は、いつの間にか「奇跡」に等しいものになっていたのだと。あの日の私は知る由もなかった。

6/22/2023, 3:45:00 PM