霜月 朔(創作)

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夜が明けた。



漸く、夜が明けました。
それなのに、どうして、
貴方はまだ眠っているのですか。

この手の中にある、
貴方の呼吸の音が、
ひとつ、またひとつと消えてゆく。
それが、こんなに愛おしいなんて。

貴方の優しさと愛は、
友愛でありながら、
私に救いの手を伸ばしたのが、
いけないのです。
私を抱きしめたことが、
いけないのです。

あのとき、貴方が
たった一度だけ、
愛おしそうに、
名前を呼んでくれたこと。
今も、鮮やかに、
胸にこびりついて離れません。

だから、
全てを壊したのです。
貴方の命までも。
貴方の首に、あの白い花を添えて。
私の指が、震えなかったことを、
きっと気付いていたでしょう。

どうか、
もう一度、私を呼んでください。
貴方のあたえてくれる愛は、
私の求める愛とは違うけれど。

それでも、構いません。
開くことのない檻の中で、
永遠に私の隣にいてくれるなら、
私は、それだけで、
満たされるのですから。


夜が明けた。
誰も見ていない。
 
貴方はもう、
私から離れてゆけない。

私の呼吸も、
もうすぐ、止まる。
…貴方の傍で。

4/29/2025, 9:06:09 AM