明日私は、違う名字になる。
新しい家は、母と暮らした家からは県を二つ跨いだところにある。
明日から母はあの家でひとりで暮らすのだ。
新しい家はとても楽しみだけれど、大事なものを置いていくような、心細くて落ち着かない気持ちがいつまでも離れない。
ありがとう。おかげさまで楽しかったわ。
私が変な顔をして黙っていると、母が私の頭をぽんぽん、と撫でて微笑んだ。
わたしのほうこそ、いままでありがとう。
ひとりにしてごめんね。
途中から声が震える。視界がぼやけて見えなくなる。
そんなのいいよ。元気でやんなさいよ。
やわらかな母の声に、また涙があふれる。
お母さんの娘でよかった。
ありがとう。
12/8/2023, 3:24:40 PM