※シリーズものですが、単体でも読めるようになっております。
「貴方を救いたい、から…!」
__流石だよ。ボクのヒーロー。
君は何時でもそうだった。ボクの為に頑張って、ボクの為に泣いて、ボクの為に立ち向かった。
それを賞賛するべきだし、感謝するべきだ。
だけど、ボクはそうはしなかった。当たり前だと思った訳ではないし、"べきこと"をする程価値のある人間では無いと思った訳でもない。
只、怖かっただけなんだろうと思う。
「…有難う。その言葉だけで、ボクは充分だよ」
そう言って、ボクはフェンスによじ登る。
「待って、待ってください…!」
…あはは、やっぱりわかるよね。こんな事し始めたらさ。
君はボクの下にやって来て、ボクを降ろそうとする。だけど、君の力よりボクの力の方が強い事はよく知っている。君は呆気なく、ボクに負けた。
フェンス越しに見た君の顔は綺麗だ。涙一雫さえも、宝石の様に輝いて見える。
…嗚呼、ボク、やっと気付いたよ。
君に救われたくないと思う理由が。ここまでやる理由が。
__ボクは只、君の視線を独り占めしたかったんだね。
知ってしまったらもう遅い。もうボクは本当に救われない。
嗚呼、こんな形で知るなんて。自覚するなんて。
それでも良いや。君の脳裏に、ボクの顔が焼き付いてくれるのなら。
ボクは飛び降りた。
地面に向かって落ちていく。
恋に落ちていく。
11/23/2024, 11:55:52 AM