死後の世界でこの人は自分のいない場所にいる、と勝手に思っている。自分と出会う前の人生と後の人生では、この人が相当長生きしない限りは後者が前者を上回ることはない。大切な人やモノは自分以外に山ほどあって、死んだ後まで自分といなければならない道理もないのである。といったことをついさっき、当の本人にぽろっとこぼしてしまった。酔って口が軽くなっていた。しばらくとんでもない渋い顔をしたのち、向こうに行ったら式を挙げようか、と一言。そんなことは可能だろうか。そもそもこっちでも挙式はしていないのだが。主に自分が照れて躊躇しているせいで。などとうっかり漏らしたせいで勝手にこっちでの挙式の話を進められそうになって完全に藪蛇だった。今後、詮ないことを考えるのはよそうと思った。仮定と逃げ道を作れば作るほど、この人にことごとく潰されそうな気がして。
(題:逃れられない)
5/24/2024, 7:17:32 AM