今日で一週間。ここのところ毎日雨である。
「はあ…」
洗面所の鏡の前に立ち、わたしはため息をついた。
右手に握りしめたヘアアイロンがピピッと鳴る。
ストレートにしたはずの前髪が早くもうねり出すのを見て、わたしは再度大きなため息をついた。
もともと前髪だけくせが出やすく、扱いづらいわたしの髪の毛は、梅雨の時期になると更に扱いにくいじゃじゃ馬になる。毎朝毎朝懇切丁寧にストレートにして差し上げても5分で元通り。あっちこっちにうねりだす。
“前髪の安定は精神の安定”という言葉もあるほど、女子高生の前髪は精神の平穏に直結するのである。
「姉ちゃんまた前髪焼いてんの?」
後ろからわたしの顔を覗くのは、頭を2ミリに剃り上げた弟だ。
「どんだけ焼いても無駄でしょ。今日もすげえ雨だぜ」
なにを整える身だしなみがあるのか。ヘアアイロンを持って絶望する姉の横から鏡を覗き込み、自分の顔を確認した弟は行ってきますと洗面所を後にした。
わたしはヘアアイロンの電源を切り、鏡に向き合う。眉間に皺を寄せた前髪がうねった女が映る。
「…坊主か」
一つの選択肢かもしれない。
6/1/2024, 11:51:57 AM