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 あの交差点を渡れば、家へと続く道だ。二人で歩く時は、なんてことのない交差点だったけれど、今日はとてもつもなく大きな場所に見える。車が結構なスピードで通りすぎた。その勢いにおされながら少し後ずさりする。

 「じゃあね」と帰っていった人は、もうこの交差点を渡ってこないだろう。違う方向へ進んでいくのだ。もしかすると、その先にはまた知らない交差点があって、違う道から来てもまた出会えるかもなんて思ってしまう。
 
 信号が青に変わった。たくさんの車がずらっと控えている。顔をあげて、いつもよりしっかりと地面を蹴って歩いた。

「未知の交差点」

10/12/2025, 8:14:47 AM