雲一つない、快晴の空。
俺の隣で、彼女は空に向かって手を伸ばし、何かを掴むように、ぎゅっと握る。
「こんな風に、空の物が掴めたらいいのにね」
「地上と空は距離がありすぎて無理だろ」
「ふふ、そうね」
空を見ている彼女の顔は、どこか、悲しげだった。
「……私ね、もう長くないの」
「なにが?」
「命が」
「えっ」
突然のことで、頭が真っ白になる。
だが、付き合う前、彼女から言われたことを思い出した。
「私ね、生まれつき身体が弱いの。だから、あなたより先に死ぬかもしれない」
彼女は体調を崩すことが多く、よく通院していた。
俺も付き添いで付いていったこともある。
まさか、そこまで体調が悪化しているとは思わなかった。
「ごめんね、隠してて」
「謝らなくていいさ。まぁ、びっくりしたけど」
出来るだけ気にしていないように接するが、動揺を隠せない。
でも、これだけは言える。
「思い出、もっと沢山作ろうな」
「うん……ありがと」
だが、その思いも叶わず、一ヶ月に彼女は亡くなった。
二人の思い出の場所で一人、空を見上げる。
雲一つない、快晴の空。
この空のどこかに、彼女はいるのだろうか?
この空のどこかから、俺を見守ってくれているのだろうか……。
俺は空に向かって手を伸ばし、空にいる彼女の手を掴むように、ぎゅっと握った。
4/2/2025, 11:58:51 AM