《終わりなき旅》
「あ〜もうやってらんねぇよ〜」
俺は仕事終わりに居酒屋で同僚と呑んでいた。いつも愚痴がある時はお互い居酒屋で喋って酒の力で忘れようとする。逃避行為なのは重々承知している。だがそうでもしないとやってられないのだ。
………飲み過ぎたかもしれない。
同僚と別れたあと猛烈に気持ち悪さやらなんやらが俺に襲いかかってきた。
しょうがない、ちょっと休むか。近くの公園のベンチに腰掛けた。結構夜遅いので人はほぼいない。
「疲れたなぁ…」
大きく伸びをする。うっかりすると寝過ごしてしまいそうだ。なんて思ってると―
「おっちゃん、何してるの〜?」
若めの声が近くから聞こえてきた。声のする方へ向くと、少年が立っていた。フードを被っていて表情がよく見えないが笑っているような気がする。
「見ての通りだよ。休憩だ、休憩。というかまだおっちゃん呼ばわりされる年齢じゃないと思うんだが?」
「そうかな?僕にとってはおっちゃんだけど」
「…んでおっちゃんに何の用だ?俺は帰んなきゃいかんのだが」
「人生って何だと思う?」
突然の少年の話題に驚いた。夜遅くに俺に話しかけるなり急に何を話し始めるんだ、この少年は。
「どうして急に…?」
「いや〜なんとなく?こんな夜遅くにうなだれてる人ってどうなんだろーなーって」
「うなだれてはいないわ」
つい、突っ込んでしまった。
「…でもそうだな、旅みたいなもんかもしれんな」
「旅?」
「ああ、そうだ。旅って予定を立てても完璧に上手くいくもんじゃないだろ?なんか人生もそんな感じがしないか?」
「なるほどね…じゃあ、おっちゃんは終わりなき旅の途中ってわけか」
「終わりなき…旅…か」
なんか腑に落ちる発言だった。人生はさながら終わりなき旅のようにちょっと計画して、実行して、次に活かす。その繰り返しだな。
「ありがと、おっちゃん。ほんのちょっとだけど楽しかったよ、それじゃ。」
そうして少年はその場を去ってしまった。
なんだか考えさせられる話題だったなぁ…
5/30/2024, 11:16:51 AM