ふっと吐息を溢せば、途端にそれは白い氷の結晶となって地に降り注ぐ。
「綺麗だね……」
惚けたような声に、肩が跳ねた。じわじわと熱が顔に集まって、堪らず彼に背を向ける。
恥ずかしい。今まで当たり前だと思っていた行為を褒められるなど、初めてだ。どう反応すればいいのか分からなくて、落ち着かない。
「ごめん。嫌だった?」
咄嗟に首を振る。
嫌ではない。それを伝えなければと思うのに、震える唇からは何も言葉が出てこない。
ほぅ、と溜息が溢れる。
「あ……」
いつもならばすぐに凍ってしまうだろう息は、けれども凍らずに空気を白く染めて消えていった。
12/9/2025, 1:23:47 AM