頭を抱えたい。でも今抱えることはできない。
なぜなら、今は数学のテストの真っ最中だから。
全くもってわけわからん。おかしいな、授業は五分か十分くらい起きてたし、ノートだってクラスで一番の真面目ちゃんから借りて丸写ししたのに!
なんで一つもわからないんだ!
ああもうどうしよう……赤点確実間違いなしだ……
……いっそのこと、寝るか……
そう決めてぺたりと右頬を机にくっつけると、横の席の答案がちらっと見えた。
そして私の頭に閃き電流が走る。
見えてる答えを書けばいいじゃん!
よし、そうと決まれば……唸れ! 私の視力!!
じ〜〜っと見てると視線に気づいたのか、横の人はわざわざ答案用紙を私の方に寄せてきた。
いいの? と口パクで訊くと、その人は私を横目で見てから親指を立て机に突っ伏した。
ありがとう心の友よ! これで0点は回避できる!
パパっと見えてる範囲を書き、わからないところは全部2と埋めた。
でもそこでふとある思いがよぎる。
……私のしたことって……カンニングなのでは……? やってはいけないことでは……?
悶々と考えたところで答えが見つかるはずもなく、やがて妄想という名の現実逃避……ちょっとカッコよく言うと心だけ、逃避行を始めた。
そうこうしている内にチャイムが鳴り、テストが終わった。
そして後日、返ってきた答案用紙の右上には大きく0と書いてあった。
見えてた横の人の答えも2で埋めたところもぜーんぶ間違っていたらしい。
……ちくしょー!
7/11/2025, 3:17:45 PM