マハーシュリーの夏巳

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【お題:ココロオドル】

昔、誰かに
読んでもらった絵本や

教科書に
載っていた話など

タイトルや作者は
思い出せなくても

大人になった今も
忘れられず
記憶に残っている絵や
ストーリーが 
あるのではないだろうか

昔、幼稚園の先生が
読んでくれた絵本があった

登場人物は
猫の男の子、
人間のおばあさん の2人

猫の男の子は
おばあさんの誕生日、
ケーキを飾るローソクを
買いに 出かける

しかし、そこは 小さな子供

買ったローソクを
無事に持ち帰ることができず

この世の終わりとばかりに
大粒の涙をこぼし
顔をクシャクシャにして
泣き悲しむ

そこで おばあさん

無事だった、
ローソク数本を
ケーキに飾り付け

その数本ぶんを
自分の年齢にして
お祝いをする

そう、
誕生日を迎えて
おばあさんと 男の子は
同じ年頃の 2人になったのだ

釣りをしよう、と誘う
男の子に対し

おばあさんは
年齢を理由に
断ろうとするが

自分が
おばあさんでなく
子供であることを思い出す

小川を飛び越えよう
と、誘ってくる男の子に

おばあさんは やはり
断ろうとして
子供であることを思い出し

男の子と一緒に
心を踊らせ 遊び、楽しむのだ

もう何十年も前に
読んでもらった絵本なのに

このストーリーと、
独特な絵

特に
猫の男の子 の泣き顔と
ローソクの様子は

ただの
子供向けの絵ではない、
これでもかと
目に焼き付けられるような

子供だからって
媚びないわよ
とでも言いたげな
作者の迫力のような

あらがえない吸引力、
強烈なインパクトを
私に残したのだった

やがて、私は大人になり
100万回生きた猫
という絵本を読み

そこで
佐野洋子という名前を知った

彼女のエッセイを
面白いなあ
と思って、たくさん読んだ

そのうち、彼女が
自分と実母のことを
書いた本が出版された

まだ世の中に
毒親という言葉が
広く知られる前だったと思う

その本のレビューに

「佐野さんの作品には
どこか  藤子不二雄Aのような
怖さがあると感じていたが

この本でお母様のことを知り、
なんとなく合点がいった」

と評している人がいて、
そのレビューと

彼女の家族環境、感性に
このうえないほど共感した

猫の男の子と
おばあさんの絵本が
彼女の作品だったと
知ったのは
大人になってからだったので

幼い子供すら
取っ捕まる、
誤魔化し なしの
凄味と魅力を思い返し

そうだったのか…
恐るべし 佐野洋子

と、
おかしいやら、うれしいやら
なんだか 心踊るような気分であった

10/10/2023, 12:42:59 AM