かたいなか

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「『愛』を『注ぐ』って何だよって、去年もたしか、あれこれ悩んで途方に暮れたんよ……」
たしか去年は、「向こうは恋を求めたが、私が注いだのは愛でした」みたいなハナシを書いた。
某所在住物書きは、あらかじめ用意していた物語を、消して、書いて、消して、書いて。
今回のお題ひとつに対して、「これを詰め込みたい」の文量が、想定以上に多かったのだ。

「一旦投稿して、あとで削り出しかな」
2400字を2200字に、2000字程度に。
途中でスリム化を断念した物書きは、愛が注がれているであろう文章の投稿を、見切り発車した。

――――――

架空のゲーム、架空の職場に関するおはなし。
むかしむかし、数年前か十数年前か、
いっそ時間など、「世界線管理局」には監視と整備の対象でしかないかもしれません、
新しいスフィンクスと、新人のドワーフホトが、それぞれ新人研修を終えて、着任しました。

無毛猫のビジネスネームを冠するスフィンクス。
今で言う「着る毛布」を何枚も重ねて、お布団に籠城し、室温25℃の「寒さ」に耐えながら、
管理局の経理部に乗り込んできたスパイだの悪者だのから、 スポン、スポン。
魂をぶっこ抜き、適当に漬物容器だの果実酒ボトルだのに押し込んで、輝きを愛でておりました。

ある日、寒がりスフィンクスのもとに、
ドワーフホトのビジネスネームを持つ同期が、不思議なデ■ポンを持ってきて言いました。
「ずーっとお布団の中で、ヒマそうだなぁって。
丁度役に立ちそうな収蔵品見つかったから、
スフィちゃん、あげるぅ」

それは、今は滅んだ世界から丁度その日回収されてきた、自意識が有るんだか無いんだか分からぬ、しかし魂を電池にして動くミカンでした。
ドワーフホトは収蔵品保護課の所属。
情報登録が終わった物を、持ってきたのです。

ドワーフホトから自走式デコポ■を受け取ったスフィンクスは、それはそれは、もう大興奮!
「おお、おお!こいつ、俺様の命令を聞くぞ!」
自走式ポンデコは、よくよくスフィンクスの言うことを聞いて、身の回りの世話と警護を始めました!
「よし。おまえは、俺様の宝物としよう!」

すっかりデコポ■――商標登録の関係があるので、ここではポンデコとでも言っておきましょう、
ともかくドワーフホトが寄越してきた宝物を気に入ったスフィンクスです。
その日のうちにポンデコの、子分の「しらぬい」を24個、愛を注いで作りました。

自走式ミカンが24+1個に増えたので、買い出しから書類提出、悪者の拘束まで、なんでもござれ!
スフィンクスはベッドの上にいながら、室温26℃の「寒さ」の中に出ていくことなく、快適に仕事ができるようになりました。

翌日スフィンクスが、スポン、スポン。
相変わらず経理部に進入してきた悪者の魂をぶっこ抜き、その辺の保温水筒にブチ込むだけの簡単なお仕事を淡々とこなしておると、
ドワーフホトが、その日情報登録が完了した特別な「日向夏」を持ってきました。

たまたま、昨日と同じ「ミカン型」でしたが、ドワーフホト、細かいことは気にしてません。
触ると温かかったし、とても強い魔力を秘めておったので、ホッカイロに丁度良いと思っただけなのです。
「スフィちゃーん。ホッカイロ持ってきたよぉ」

それは、昨日の不思議な不思議なポンデコと同じ世界から回収されてきた、不思議な日向夏。
あらゆる「夏」、「太陽」、「火」、「暖かさと熱さ」、「完全と再生」の概念とチカラを詰め込んだ、要するにとってもすごいミカンでした。

「またミカン持ってきた。好きなのか?」
ドワーフホトから太陽と夏の象徴な日向夏を受け取ったスフィンクス、秘められた温かさと魔力に大満足!
この日向夏もまた、ポンデコとしらぬい同様、スフィンクスの宝物に認定しました。
「そんなにミカンが好きなら、俺様がその辺にブチ込んでる魂の容れ物もミカンにしたら、喜ぶかな」

すっかり日向夏を気に入ったスフィンクスです。
日向夏の温かさと内包された魔力を使って、
電力不要、拡張空間内包の、ハイパーコタツを作製し、コタツのコアとして搭載しました。

更にスフィンクス、今まで漬物容器だの保温ボトルだのに、適当にブチ込んでいた魂たちを、
美しい魂と、別に美しくない魂と、
それからとびっきり美しい魂に選り分けて、
とびっきり美しい魂だけを集めて、
とびっきりの愛を注ぎ、美しいミカン型の「魂の容れ物」をこしらえました。

美しい魂で作られた、美しい魂だけを入れておくための美しいミカンは、透き通った水晶の輝き。
「よし!おまえを、水晶文旦と名付ける!」
クリスタルミカンの美しさに満足したスフィンクス。きっと、ドワーフホトも喜ぶでしょう。
ニッコリ笑って、誇らしげに、クリスタルミカンもまた宝物として、認定したとさ。

12/14/2024, 4:06:15 AM