ののの糸糸 * Ito Nonono

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No.45『特別でもなんでもない一日』
散文/掌編小説

 目が覚めてみると、もうお昼を過ぎていた。夜勤が終わったのが午前3時で、眠りについたのが午前6時過ぎだったから、5時間はゆっくりと眠ったことになる。
 引っ越し祝いにもらったテレビをつけると、お昼のワイドショーをやっていた。チャンネルを変えると、どのチャンネルも同じようなもので、わたしはチャンネルはそのままにボリュームだけを下げた。

 一人暮らしの部屋には、当然だけど人の気配がない。音に関しては全くの無音じゃないから気にならないが、人の気配がないのは寂しいというか、なんというか。
 液晶画面に人の気配を感じながら、わたしは本日、初めての食事の調理を始めた。といってもトーストを焼いて珈琲を淹れるだけの簡単なもので、オーブントースターにバターを塗った食パンを入れるだけで、あとは勝手に調理してくれる。

 今日は一週間ぶりの休みの日で、夜勤と日勤がごちゃ混ぜだった一週間の終わりだから尚更、好きなことをして好きに過ごしたい。トーストを食べて珈琲を飲んで。無音のテレビ画面を眺めているうちに、気づけば窓から見える四角い空が、真っ赤な夕日に染まっていた。

お題:沈む夕日

4/8/2023, 9:44:57 AM