とある恋人たちの日常。

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 好きって思う感情はようやく分かって。
 ああ、恋に落ちたんだって理解したんだ。
 
 俺自身はそんな気持ちを持つなんて思わなかった。
 
 俺と彼女の縁ってほとんど偶然だから、会いたいけれど気軽に会えない。
 客商売で、誰にでも屈託のない笑顔で対応するし、幼さが残るのに気遣いができて一緒にいると心地いい。
 
「会いたいなぁ」
 
 小さくこぼす本当の気持ちと一緒に寂しさが溢れ出して止まらなかった。
 
「わ!」
「わー!!!」
 
 背中に優しくなにかが当って弾かれる。ぼんやりとしていたから、心臓がとび出そうなほど驚いて振り返る。
 そこには会いたいと願っていた彼女がいたから違う意味でも心臓が跳ねた。
 
「あはは、こんにちは!」
 
 バックバックと心臓の音がうるさくて、笑顔だった彼女が怪訝な顔をする。
 
「ご、ごめんなさい。おどかしすぎましたか?」
「いや、本当にビックリしたけど大丈夫だよ」
 
 彼女にも俺の鼓動が聞こえるんじゃないと思うほどバクバクしている。けど、彼女の顔を見ていたらさっきまでの寂しい気持ちが吹き飛んで、もっと違う暖かい感情が溢れ出していた。
 
「見かけたから声掛けちゃいました」
 
 綿毛のような柔らかい髪の毛が揺れ、ふわりと微笑んだ彼女を見て更に気持ちがこぼれ出ていた。
 
 自然と笑顔になる。
 だって会えたんだもん。
 
「声掛けてくれて、嬉しいよ」
 
 そう彼女に言うと、嬉しそうに笑ってくれた。
 
 会いたかったんだ。
 どうやって会おうか悩んでたんだ。
 見かけたら声かけようと思ったんだ。
 
 普段は声掛けてくれないの知っているから、彼女が声をかけてくれたのは驚き一緒に、色んな感情が溢れ出るのを止められなかった。
 
 
 
おわり
 
 
 
四五六、!マークじゃ足りない感情

8/15/2025, 2:48:26 PM