#冬晴れ
ロウバイの香りが好きです。
蝋梅、と書きます。
植物なのに「蝋」。
ちょっと不思議な字を使います。
実物を見ると、すぐわかります。
梅独特のあのピンと上へ跳ねた枝に、淡黄色の花びらが丸く重なってくっついています。この花びらが、半透明なのです。本当に蝋をうすく固めてくっつけたようです。
正直に言うと、花自体はそんなにきれいとは思え
ません。
こんなことを言うのは申し訳ないのですが、薄い黄色が何となくみすぼらしいのです。真っ白いお皿にこびりついたカレーの染みの黄色なのです。おなじ早春に咲くマンサクも、四月頃にパッとまっ黄色の茂みをつくるレンギョウも「カレーの染み」と認識していますから、黄色い花自体にあまり惹かれないのかもしれません。
こんなに、いい匂いがするのにね。
ちょっとがっかりして、裏路地に覆いかぶさる
ように伸びている枝の下を、通り抜けようとした
時でした。
甘い香りにつられて、つい、顔をあげてみまし
た。
青空がひろがっていました。
寒さで澄みきった空に、蝋梅の花が咲いていま
す。冬の昼下がりの陽の光が、半透明の花びらをすかしています。硝子細工のような、つららの先の滴のような、繊細なかがやきを放っています。ふわりと甘い、どこか切ない香りがただよっています。
心が、すっきりしていました。
もう少しだけ歩いていこうかと、帰り道とはちがう方へ、軽くなった足を向けていました。
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追記:
梅とつくが、じつは梅ではないらしい。クスノキ目とのことで、枝の形状も全然ちがう。おかしいな。
引っ越してから近所でさっぱり見なくなったため記憶が混同していたもよう。
1/5/2024, 4:52:33 PM