地位とは、恐ろしい。
地位を得てしまえば、大抵の人間はその地位に固執してしまう。
その地位を得ようと、わたしは多くを犠牲にした。
その地位を得ようと、わたしは平然と心を殺した。
野心自体、決して悪い訳では無い。
むしろ、高みを目指すことは良いことだと思う。
しかし、多くのものが見失う。
高みを目指す事自体が、目的と化してしまう。
何故、わたしは高みを目指したのか。
それは、貴女への恩返しだったはずだ。
しかし、わたしは……長らく忘れてしまっていた。
貴女が私に宛てた遺書を見るまでは……。
そうだった、そうだったな。
貴女は愛情深く、聡明な人だった。
わたしは貴女の有する、全てを引き継いだ。
だから、わたしは高みを目指したのだ。
貴女の生前には叶わなかった、恩返しをしたかった。
貴女に直接は述べられなかった、感謝の意を示したかった。
最上の地位に就くことで、貴女が成した決断への不安を解消して、
わたしは、貴女を安心させたかったのかもしれない。
1/25/2024, 2:50:25 PM