冬眠

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「誰も知らない秘密」


 人差し指を立てた後に小指を立てて、ぐーを作ってから手を振る。

 カーテンを開けた先の向かいの家のベランダにいる幼馴染みと目が合うと、彼女はにっと笑みを浮かべて大きくうなずいた。私がこれをして彼女に伝わらなかったことはなくて、でもいつか伝わらない日が来るんじゃないかと思うと少し怖い。

 別に二人で決めた訳じゃなかった。声が届かないから、手話のような感覚で、手を動かしてみただけだ。別に伝わらなくてもよかったのに、彼女はにこりと笑顔を浮かべてくれた。それ以降、毎朝彼女にこれをするのが日課になった。

 一体なにに気付いてくれたのだろう、なにと捉えたのだろう。
 私と彼女が直接会う機会はないから答えは分からないけれど、例え分からなくても、彼女が頷いてくれるだけで、認められているような気持ちになるのだ。

2/7/2025, 4:19:39 PM