12年前、冷蔵庫でコールドスリープした幼馴染が
「それなに?」
「……」
最近、出てきた。
「栄養食」
「ふーーーん、おいし?」
「いや」
明るい性格で、可愛い声だった彼女の頭には向日葵が咲いている。不朽映画のように、声が倍音でくぐもって聞こえる。
「あんまり」
この夢は、死にかけている。圧倒的現実感の前に、耐えきれなくなっている。
向日葵のような女の子、可愛い声の女の子。女の記憶に生きる彼女はすでに形をなさなくなっていた。
開け放たれた冷蔵庫、その前には人の形をした肉塊が腐っている。
「“とまと”なの?」
「違うよ」
「ふーーーん?」
女は眠っている。シリアスなリアルに目を背け続けている。瞼の裏には、別世界がある。
まるで、彼女こそが極寒の地で眠っているみたいに、震える手で、必死に夢を描き続ける。
【現実逃避】2024/02/27
できるはずないのにね
2/27/2024, 12:04:31 PM