おくりびと

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《モノクロ》
僕の友人二人の話しをしようと思う。
一人は賢くて優秀だが感情などに疎い研究者の桐生。
もう一人は明るくてお人好しがすぎる芸術家の悠陽。
嗜好も性格も全部真反対な二人は常に喧嘩している。
でも、一緒に居るのをやめることはなく、遂にはルームシェアを初めてしまう程だった。
凹凸がぴったりはまっている、そんな二人だった。

ある日、桐生に聞いた。
何故そんなに喧嘩するのに一緒にいるの、と。
桐生は面白いからと答えた。
自分じゃ気にもとめないものを、美しいと称賛する彼の言葉を聞いていると、まるで世界が色付いているように見えるから、と。
桐生のモノクロの世界は悠陽のフィルターを通してみると、鮮やかに色がつくらしい。

だから、桐生が悠陽を殺したことは今でも信じていない。
あの親が死んだ時ですら泣かなかった桐生が、ずっと何も話さずにただ泣き続けているのだから。
警察という誇りにさえ思っていた自分の職業を初めて辞めたいと思った。

目を閉じればいまでも、声高に桐生に対して文句をならべたてる悠陽と、それをあしらう桐生の声が聞こえる気がした。

9/29/2025, 10:44:17 PM