Naru

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君が僕の全てだった。
君さえいれば他に何もいらなかった。
君が呼んでくれるその声が好きだった。

『どうか、まだここにいて。』

第一章 君の存在

いつか、自分を理解してくれる人がどこかにいると期待していた。
僕の中の真っ黒で汚いこの感情をまっさらにしてくれる人がいるのではないかと期待していた。
誰も信用できない僕を肯定してくれる人が現れるのではないかとどこかで期待していた。
そうして、知らぬ間に期待していた。何度も、何個も、この救われるべき人間ではない僕を救ってくれる人がいると信じていたかった。信じていないと、何かを失ってしまう気がして、怖かった。
「お前まじで頭おかしいよ?」
「そういうのやめなよ」
「上手く行かないよ。」
否定され続けた人生で、誰かに受け入れてもらえる未来をどこかで待っていた。
この心の奥底に眠る寂しさ、苦しさを、見え透いているように理解してくれる人がいて、その感情を和らげてくれるような人がいるのだと思っていた。
眠れば朝が来る。だから、眠りたくないと叫ぶ。
夢でさえも見たくなかった。今でも、耳裏にこびりついて離れないのだ。泣き叫ぶ母の声。亡骸で帰ってきた兄。
まだ幼かった僕でさえ、簡単に理解することはできた。
あぁ、兄は死んでしまったのだと。そう、理解することはできたのだ。
でも、心を追いつかせることは未だにできていない。
家を出て、ただ無心で学校へと歩く。
「やっほー。」
後ろから声をかけられる。
僕は友達もいないし知り合いもいないため話しかけるわけがない。そう思い無視して歩く。
「おーい、やっほー。」
渋々後ろを振り返るとそこには男の子がいた。
「お、やっとこっち向いた。ところでさー君が思っているより世界は悪いもんじゃないよ?」
初対面で、しかも世界の話なんて。なんなんだこいつ。
でも、少しだけ心につっかかった。世界は悪いもんじゃない――その言葉が脳内を巡っている。
「誰ですか。」
「ん?俺?俺は三上玲央だよ〜」
「知らないんですけど。人違いなんじゃないですか。」
「人違いじゃないよ〜君の名前教えて?」
「はぁ?なんで知らない人に名前教えなきゃいけないんですか。」
「まあまあいいじゃん〜」
やけに馴れ馴れしい。こういう人間が一番嫌いなタイプだ。あぁ鬱陶しい。
「黒山遙です。」
「遙くんか〜いいね〜いい名前だ。」
「あの、さっきから馴れ馴れしいんだけど。」
「あはは〜随分ストレートに物を言う子なんだね」
「で、なんの用なんですか。」
「俺に世界を教えてよ!」
「???????はい?」
「だーかーら!世界を教えてって!俺あんまり知らないんだよね〜世の中のこととか。テレビとか見ないし!」
なんなんだこいつ。そんなことなんでわざわざ僕に聞いてくるんだ?
「そんなこと僕に聞かれても分からないし。他に聞いたほうが早いかと。」
「君がいつもしてることとかでもいいんだよ!あと最近見たニュースとか、記憶に残ってる出来事とか!」
「そんなに世界のことが知りたいんですか。なら自分でいろいろ調べたりしてみればいいじゃないですか。」
「俺は君と一緒に知りたいの!」
「記憶に残ってるニュースありますよ」
「なになに?」
「高校生男子がいじめや虐待などで自殺したニュース。」
「そういうニュース結構いるよね?どれくらい前?」
「確か名前は三山怜みたいな。5年前ぐらい?たぶん。」
「そうなんだ。どんなニュースだったの?」
「んー、自殺したその子が発見されて、警察が死亡理由はなんなのか調べたら自殺だっていうことが判明して、自殺した理由はその子の日記?に書いてあった、毎日のクラスメイトからの酷いいじめと親からの虐待。」
「なるほどね。ふむふむ、つまり世界はそういう残酷な事が起きているってことだね。そのニュース見てどう思った?」
「その子をいじめていた人がクラスメイトの中にいるはずなのに誰も名乗りでず、その子の日記にも名前だけは書かれていなかったらしい。そしてクラスメイトの誰に聞いてもいじめはなかったって。その子の親もどうせ妄想だって決めつけてたらしい。ほんとにクズで最悪だよ。」
「なるほど、、君は自殺についてどう思う?」
「自殺、、は良くないとは思うけど、本当に死にたくて死にたくて仕方ないなら死んでもいいと思う。」
「そっかそっか。君は自殺しようと思ったこととかある?」
あるけれど、あるとは言えない。ので、、ないと答えた。
「嘘だね?顔に嘘って書いてあるよ」
「あるよ。ある。てか人間誰しも1回ぐらい思うもんなんじゃないの?」
「そういうもんなの?」
「悩みのない人間はいないわけだし。悩みのせいで死にたいと思う人もきっといると思う。」
「ふむふむ。君はなんで死にたいと思ったの?」
「世界に絶望したから。神様は何も与えてくれない。僕は兄を奪われた。それから母さんもおかしくなった。家に帰らず、酒に酔って帰ってきて。」
なんだか、この人になら話してもいいのかもしれないと少し、ほんの少しだけ思ってしまった。
この人なら、僕の孤独を埋めてくれるかもしれない、と期待してしまった。
その期待もきっと長くは続かないだろうけど。
「分かった!俺にこの世界の楽しさを教えてよ!流行りの食べ物とか!」
意外と甘い物や流行りには詳しいのですぐにいいよと返した。
そうすると嬉しそうな顔をした。
「君が楽しんでくれるならいいよ!俺は君が楽しんでるところを見てるだけで満足だから!」
変な人だと思った。教えてよとは言うくせに自分はやらないということが。
そして僕たちが向かったのはタピオカ店。
「これなに?!若い子たちがいっぱいいるね!」
「タピオカだよ。知らないの?」
珍しくないか?未だにタピオカを知らない人間なんか赤ちゃんぐらいしかいないと思っていた。最近は精神的に若いおばあちゃんなどもいるため、意外と知っているものだと思っていた。
「タピオカ?へぇ〜美味しそう!」
「飲む?」
「え、いいよいいよ!」
そして僕がタピオカを頼み飲んでいるとじーっと見つめてくる。
「なに?飲みたいなら飲めばいいじゃん。」
「ううん、すごく美味しそうに飲むから。若いっていいね!」
「三上は何歳なの?」
「俺?17だよ〜」
「僕も17だよ。」
「じゃあ同い年だね!」
てっきり年下かと思っていた。子供っぽい性格をしているから。
「遙は明日何するの?」
「明日?普通に学校だけど。」
「学校かぁ、、楽しい?学校」
「楽しくない。友達もいないし知り合いという知り合いもいない。」
「一匹狼なんだ?」
「ただの陰キャだよ。」
「陰キャ?」
「うん、陰キャ。」
もしかして陰キャも知らないのか?
そうすると少し困ったように笑った。
「陰キャかぁ、、なるほど、、」
「ほら、あんま目立たない人みたいな。」
「遙は陰キャなの?」
さっきからそう言ってるじゃん、と返す。
「休み時間とか何してるの?」
「ん〜屋上にいるかな。」
「屋上?なんで?」
死にたいから、なんて言えないと思った。だから、空を見るから。と答えた。
「遙はさ、どうしようもない孤独を感じたりすることある?」
そう聞かれて、ドキッとした。最近、孤独を感じることが多いと思っていたから。なんで?と聞き返す。
「なんとなく、寂しそうな顔してるから。」
僕はそこで思ったのだ。この人は、僕と同じような人間なのかもしれない、と。
この人なら、僕の中の真っ黒で汚いこの感情も分かってくれるのかもしれない、と。
だから、正直に答えた。
「人といても孤独を感じることが増えたように思えるんだ。なにかが足りない、みたいな。」
「心に穴があいてるような感覚?抜け落ちて戻ってこない、、みたいな。」
まさにそれなのだ。少し恐ろしいとまで思うほど僕の心を言語化してくるのだ。この人間は何か違うと僕は思った。
生きているけれど、生きた心地がしない、そんなような感覚。苦しい、辛い。そういう暗い感情が昔より、いや、兄が死んでから増えたような気がする。ボーッとする時間も増えた。
「心が死んだ、みたいな?」
共感しすぎて思わずそう!と叫んでしまった。
「どこかで、誰かに期待してたんでしょ?誰か、誰かって。いつか自分を救ってくれる人間が現れるって、現れるかも分からないその人に期待してたんだよね?」
「うん。期待してるんだ。どこかに現れないかな、誰か救ってくれないかなって。」
「俺がその存在になってあげるよ。」
そう、言われたら少し驚いてしまうけれど、救ってほしいことには変わりない。だから素直にお願いしたのだ。
そうすると三上はまた少し笑った。
「自分は他人と違うって、そう思いたいんだよね?良い意味でだよ。」
「そうなんだよ。誰かにそうやって言ってほしかった。つまらない奴とは違うって。」
「俺が何度でも言うよ。遙は他の人とは違う。だってこんな俺とも話してくれてる。」
三上の“こんな”俺という言葉に少しモヤモヤした。三上と会ってから彼が今まで否定的なことを言ったことはなかった。
そんな三上から、自分を卑下するような言葉が出てきたことにモヤモヤと、同じ人間なんだ、という少しの嬉しさが混ざって、複雑な気持ちになった。
そんな僕に気づいたのか慌てたように三上は笑った。
「あんまり深いこと考えなくていいよ。遙はきっと優しすぎるんだ。もっと自分勝手になっていい。もっと自己中心的な考え方を持ったっていいんだよ。」
「他人を気にしちゃう、とか?」
「そうそう。周りから、やめなよとかそれおかしいよとか言われることってあると思うんだけど、俺は思うんだ。したいことがあったらすればいいんじゃない?って。君が本当にしたいことなら、すればいいと思う。」
「僕もそれ思う。思うんだけど、どうしても自分がそう言われると、諦めちゃうんだよね。」
「周りの許可なんて必要ないし、周りの同意なんて必要ないんだよって俺は伝えたい。遙は十分いい考えを持ってるし、そこを否定するのはダメだよ。遙の考えは間違ってないし、遙自身も間違ってない。」
僕は気づいたら泣いていた。
僕はもしかしたら、この言葉を待っていたのかもしれない。
“間違ってない”この1言を貰いたかったのかもしれない。この人は誰よりも優しいと思った。それと同時に、きっと世界のいろんな汚いところを見てきたのだろうと思った。
そして、その汚いところと向き合い、自分の心も他人の心も大切にしながら、言語化する力を持っているのだと、思った。そういうところが、僕にとっては心地よかった。僕の心のモヤモヤが、1つずつほどけていくような感覚になった。
この人なら本当に救ってくれると、僕は確信を持った。
「遙は人よりも人に敏感で、人よりも人の気持ちに敏感で。だけど自分の心には鈍感なんだよ。だからこそ、俺には遙が誰よりも光って見えるよ。」
僕の中の黒い感情が、少し、ほんの少しだけれど、小さくなったような気がした。
「三上、ありがとう。」
気づいたら、そう口にしていた。三上は照れたように笑った。
「遙が救われるなら、俺はなんだってする。なんだって差し出すから。生きてほしい。」
生きてほしい、なんて言葉僕は嫌いだった。なのに、三上に言われるとちっとも嫌とは思わなかった。
なぜなら彼の言葉には、自分の罪悪感など全く考えず、純粋に僕に生きていてほしいと願っていることが伝わってきたからだ。この人は本当にどこまでも真っ直ぐで、こういう人がヒーローだと言われるんじゃないかと思った。
「三上は、ヒーローみたいだね。」
そう言うとびっくりしたような表情になった。
「ヒーロー?どうして?」
「いろんな言葉をくれて、僕を救ってくれるから。」
「救えてるなら、良かったよ。」
同じ年齢の子供だとは思えないほど、大人っぽく感じられるのは、こういう考え方ができるところなのだろうと思った。
「あ、もうこんな時間だ。俺もう帰るね。また明日、遙。」
「あ、うん、またね。」
突然の別れに少し驚いたが時刻はすでに20時を回っていた。
家に帰ると、部屋が散らかっていた。母さん、帰ってたんだ。
「ただいま。」
少し大きな声で言うと声が返ってくる。
「おかえり、、ふぁー、、、私もう寝るわよ。」
「おやすみ、母さん。」
そして母さんは自分の部屋へと戻っていった。
お風呂に入り、寝る支度をして、寝床についた。
また明日も三上に会えますように、と願いを込めて。

第二章 希望の光

次の日、朝起きると既に母は仕事に行ったようだった。
三上と出会って、三上のいない時間はなんだか少し時間が遅いように感じられる。
そういえば、三上がどこの高校に行っているか、僕は知らなかった。また会えたらその時に聞こう。
写真立ての中にある穏やかな笑顔をした兄に行ってきます、と声をかけて家を出た。
三上がいないとなんだか少し寒く感じられる。
そこでふと気づいた。僕、三上のこと考えすぎじゃない?と自分でツッコミを入れる。
そしてふと感じた。三上と出会う前の僕とは確実に何かが違う、と。
いつもより早く学校に着くと、またいつもの学校とは違う雰囲気に感じられた。静けさがあり、落ち着く。
それからどんどんクラスメイトが入ってきて、また教室が騒がしくなっていく。
そういえば、三上は同じ高校ではなかったか、と思い教室を見渡してみる。
その時に気づいた。僕、クラスメイトの顔ちゃんと見たことなかったんだと。そうか、いつも下を向いていたから顔を見たことがなかったんだ。
そう思うと、三上のおかげでだんだん自分は変われてきているのだと思い始めた。
教室を見渡しても三上はいなかった。
他の教室を見てみても三上はいなかった。
同じ高校ではなかったのだと思った。
僕は三上と連絡先を交換していなかったため、三上と会うにはどうしたらいいか1日考えた。
昼休みになり、教室で弁当を食べている時、ふと思い出した。
そういえば、三上と休み時間は屋上にいるって話をした、と。
いや、そんなわけない、と思ったけれど希望を捨てきれず屋上に向かった。
そうすると、三上はいた。
「あ、遙だ。やっほ~。」
いつもと変わらない三上の笑顔。気づけば僕は三上にふっと笑顔を返していた。
「遙が笑ったところ、初めて見た。」
僕の笑顔を見た三上は本当に嬉しそうに笑った。
この世界にこんな風に僕がプラスな感情を持つことに自分のことのように幸せだと思ってくれる人がいるなんて、きっと前の僕だったら思わなかっただろう。
そして、僕も思うのだ。三上が笑ってくれることが僕にとっての幸せなのかもしれない、と。
「あ、そうだ、三上。連絡先交換しない?」
「連絡先?あぁ、、ごめん。俺スマホ持ってないんだよね。」
今の時代スマホを持っていないなんて本当に珍しいことだと思ったけれど、こうして三上と会えるならなんでもいいのかもしれないと思った。
「そうなんだ。親厳しいの?」
「まあね。」
「あ、そうだ。三上何組?」
「俺?5組だよ」
「僕3組。」
「そうなんだ!」
僕が教室を見た時は三上はいなかった。なんでだろうと不思議に思った。
「さっきの休み時間、クラス回ったんだけど三上いなかったよね?どこにいたの?」
「そうなの?俺トイレ行ってたよ。」
「だからいなかったのか。」
「あ、今日は放課後どんな楽しいことするの?」
「ん〜クレープ食べるかな、、」
「クレープって流行ってるの?」
「流行ってると思うよ。みんな結構食べてるし。」
「そうなんだ!遙は食べたことある?クレープ」
「あるよ。三上は?」
「俺?食べたことあるけどそんなにいっぱい食べる機会があるわけじゃないかな」






すいません!また続き後で書きます!また続き書いたら読んでくださいぃ!
このアカウントでは小説を書いていこうかなと思っています。
ちなみに前アカウントあったんですけど、スマホ自体が壊れてしまったので、新しいアカウントです!
前の名前と同じにはしておきます!Naruだった気がする!たぶん!
あなたの心に残るような小説を残したい。そう思っています。
あなたが、私の拙い文章を呼んでくれたあなたの人生が輝かしいものでありますように。

11/8/2025, 2:09:43 PM